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artscapeレビュー

《サムスン美術館リウム》

2018年02月15日号

[韓国]

インドから日本に帰る途中、ソウルの乗り換えで数時間あったので、久しぶりに《サムスン美術館リウム》に立ち寄った。空港から最寄の駅まで、ほとんど地下空間の移動だけでアクセスできるおかげで、冬の厳しい寒さを感じるのは最小限に抑えられた(日本の美術館でこれが可能なところはどれくらいあるだろうか)。開館当初に一度訪れたときは予約制だったはずだが、いまは自由に訪問できるようになった。これはマリオ・ボッタ、ジャン・ヌーヴェル、レム・コールハースという三巨匠が各棟を設計するという夢のプロジェクトであり、収蔵品もクオリティが高い施設だが、企業の美術館だけではない。その後のソウルではザハ・ハディドの《東大門デザインプラザ》やMVRDVによる「ソウル路7017」などが登場し、さらに前衛的なデザインの存在感を高めている。一方、現在の東京は凡庸な開発ばかりで、むしろ昭和ノスタルジーに浸り、逆方向に向いているのではないか。

この美術館が興味深いのは、それぞれの建築家のデザインの特性を考え、ボッタ棟は古美術、ヌーヴェル棟は近現代の美術、そしてコールハース棟は映像、教育、特別展示など、フレキシブルな使い方をあてがっていることだ。また以前にはなかった手法によって、展示がバージョンアップしていた。例えば、ボッタ棟は韓国の古美術や工芸の展示だけに終始するのではなく、一部にマーク・ロスコなどの現代美術を加え、作品による新旧の対話を試みていた。またコミッションワークが効果的に挿入されていた。例えば、鏡面を活用し、黄色い半円群をリングに見せるオラファー・エリアソンの大がかりな空間インスターレションは、古美術の展示が終わり、中央のホールに戻る大階段の上部に設置されている。またカフェでは、リアム・ギリックのカラフルかつグラフィック的なインテリア・デザイン風の作品が、10周年を記念して2014年に増え、空間をより魅力的なものに変えていた。

マリオ・ボッタ《MUSEUM 1 時代交感》

レム・コールハース《サムスン児童教育文化センター》


オラファー・エリアソンの展示

リアム・ギリックの展示

2018/01/07(日)(五十嵐太郎)

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