2019年12月01日号
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artscapeレビュー

カオス*ラウンジ新芸術祭2017市劇場「百五〇年の孤独」

2018年02月15日号

会期:2017/12/28~2018/01/28

zittiほか、泉駅周辺の複数会場[福島県]

福島のワークショップにあわせて、カオス*ラウンジによる新芸術祭に足を運んだ。が、行政の芸術祭とは違い、幟やポスターはなく、本当にここで開催しているのかと不安に思いながら、泉駅からそう遠くない住宅地にあるサブカルの古物(?)店に多くの作品がまぎれた第一会場へ。まず店内で珈琲をいただき、第一の手紙と地図を受け取る。それに従い、駅周辺をぐるぐる歩く(第二、第三の手紙もあり、次の目的地が示される)。それはこのエリアの近代における廃仏毀釈と黒瀬陽平らのリサーチをたどるツアーにもなっている。移転や区画整理された人工的な墓地などを鑑賞し、これから新しい寺を創設するという第二会場へ。力作である。建築の分野ではユニークな造形による現代寺院の試みはさまざまあるが、壁や襖などを使い、室内においてアートの側から新しい仏教美術が高い密度で展開されており興味深い。昨年、黒瀬が「地獄絵ワンダーランド」展(三井記念美術館)に高い評価をしていた背景も理解できる。

もう一度駅の反対側に渡り、坂を登っていく、最後の第三会場への道は正直ちょっときついが、日が暮れた暗闇のなか、ようやく到着した。ブラックライトに照らされた壊れたディスプレイ群が美しい。そしてアルミニウムで鋳造された鐘をついて帰路へ(この音が結構遠くからも聞こえる)。第二、第三会場の作品は、日中に鑑賞するよりも、周囲が暗いほうが迫力を増すように思われた。おそらく税金を使う通常の芸術祭だと、特定の宗教にフォーカスをあてるのは難しいだろう。自前の新芸術祭だから可能な内容だった。これは廃仏毀釈のあとにたどった歴史と、3.11からの復興の失敗を重ね合わせてもいるのだが、泉駅周辺を歩きながら思ったのは、このエリアが近代以前からの歴史をもった街にはまったく見えないこと(戦後に開発されたと言われても納得してしまいそうだ)。そういう意味では、ここも日本中のどこにでも起きている「見えない震災」が着実に進行していた場所なのだ。

第一会場

移転した墓石

第二会場

第三会場

2018/01/13(土)(五十嵐太郎)

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