2019年12月01日号
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artscapeレビュー

第16回写真「1_WALL」グランプリ受賞者個展 千賀健史展 Suppressed Voice

2018年02月15日号

会期:2018/01/30~2018/02/16

ガーディアン・ガーデン[東京都]

1982年生まれの千賀健史は、第16回「写真1_ WALL」展のグランプリ受賞者である。受賞作は教育問題に直面するインドの若者たちのドキュメンタリーだったが、1年後の今回の展示では、その取材の過程で出会ったひとりの少年にスポットを当てていた。成績優秀で、大学進学を目指していた彼は、ある日突然学校に来なくなった。調べてみると、兄に命じられて学校を辞めて働かざるを得なくなったことがわかった。千賀は母親から聞いた携帯電話の番号を辿って、彼が1500キロ離れた南インドの街で服屋の店員として働いていることを突き止める。今回の展覧会には、その探索のあいだに撮影された写真と映像、少年が学校で使っていたノートのコピーなどが展示されていた。

千賀が取り上げた事例は、児童労働従事者が400万人ともその倍ともいわれるインドでは、よくある出来事である。この「小さな物語」は、だが逆にインドに限らず、過酷な生の条件を背負わざるを得ない少年・少女たちの状況へと見る者を導く普遍性を備えているともいえる。千賀はその出来事を伝えるために、従来のドキュメンタリー写真とはかなり異質の方法を取ろうとした。壁に写真を撒き散らすように並べるインスタレーションも、テキストや映像を一緒に見せるやり方も、ややとっつきにくいものに見えるかもしれない。だが、そんな模索を続けるなかで、多次元的な構造を備えた「ニュー・フォトジャーナリズム」の文法が、少しずつ形をとっていくのではないだろうか。次の展開を充分に期待できる内容の展示だった。

2018/01/31(水)(飯沢耕太郎)

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