artscapeレビュー
永山祐子インタビュー、DESIGNART TOKYO 2018 藤元明+永山祐子《2021#Tokyo Scope》
2018年11月15日号
[東京都]
12年ぶりとなる『卒業設計で考えたこと。そしていま』(彰国社)第三弾のインタビューのために、永山祐子の事務所を訪れた。彼女の店舗デザインの仕事などから想像すると、ちょっと意外な卒業設計だったが、縦糸と横糸を編むような巨大な複合駅施設によって高低差のある日暮里駅の両側をつなぐ、大型のプロジェクトだった。時代背景を考えると、FOAの《横浜港大さん橋国際客船ターミナル》の影響もうかがえる。卒計のスタディのために、図書館で調べたさまざまな視覚資料を収集したファイルが興味深い。ファッション、布の織り方、遺伝子の構造図など、建築以外のネタからさまざまな着想を得ていることがうかがえる。実際、筆者は学会のワークショップで学生時代の永山に会ったことを記憶しているが、そのとき共通の話題として(まだ建築のプロジェクトがほとんどなかった)ディラー+スコフィディオで盛り上がったように、当時から建築にとらわれない横断的な関心をもっていた。舞踏団にのめり込んだ時期もあったらしい。
その後、南青山のエイベック本社のビルにおいて、藤元明と永山祐子による巨大なインスタレーションを見学した。エントランスの大階段を制圧しつつ、都市を映す鏡面としての銀色のバルーン(直径7mの半球が円錐に変容していくフォルム)が展示されていた。ビルのファサードにはオリンピック以後を示す「2021」プロジェクトの数字を掲げ、また床の赤いラインによって、北西側の明治神宮や東京オリンピック1964などのレガシーエリアと、南東側に展開する六本木ヒルズから豊洲のベイゾーンを串刺しにする新しい都市軸も表現している。丹下健三の「東京計画1960」を意識したものだ。壮大なスケール感だが、彼女の卒業設計を知っていると、連続性を感じられるだろう。また実際に永山は2020年のドバイ万博の日本館や歌舞伎町の超高層ビル《新宿TOKYU MILANO》のファサードデザイン(2022年完成予定)を担当しているほか、東京の目立つプロジェクトも準備しているらしく、なかなか若い世代が次のステップに進めない現代の状況において、着実に仕事の規模が大きくなっている。
2018/10/26(金)(五十嵐太郎)