2019年08月01日号
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artscapeレビュー

藝大コレクション展2018

2018年11月15日号

会期:2018/10/02~2018/11/11

東京藝術大学大学美術館[東京都]

会場に入るといきなり正面の壁に久保克彦の《図案対象》が掲げられている。最近NHKで特集されたのでメインの場所に展示されたのかもしれない。久保はいわゆる戦没画学生の1人で、戦時中に東京美術学校図案科を繰り上げ卒業させられ、学徒出陣で戦死。《図案対象》は出征前に卒業制作として描かれたもの。大小5枚組のうち中央画面に戦闘機や船舶などが描かれているため、戦争画に分類されることもある。だが、厳密に計算された構図を吟味すればわかるように、これらの戦闘機や船舶は画面構成の上で必要な形態として用いられているにすぎず、戦意高揚を目的としたものではない。だいたい戦闘機は墜落中だし、船は転覆しているし。

でも今回のメインはこれではなく、柴田是真の《千種之間天井綴織下図》。計112枚の正方形の画面のなかにさまざまな種類の植物(千種)を円形に描いたもので、これを元に金地の綴錦がつくられ、明治宮殿の天井を飾った。戦時中はこの千種の間でしばしば戦争記録画が展示され、天皇皇后が見て回ったという。その後、戦火によって明治宮殿は焼失。残されたのはこの下図だけだという。最近修復を終えて今回お披露目となったもので、壮観ではあるけれど、しょせん装飾の下図だからね。

そのほか、高橋由一の《鮭》、原田直次郎の《靴屋の親爺》、浅井忠の《収穫》など日本の近代美術史に欠かせない作品もあれば、吉田博の《溶鉱炉》や靉光の《梢のある自画像》など、第2次大戦中という時代背景を抜きに語れない作品もある。おや? っと思ったのは《興福寺十大弟子像心木》。像そのものは失われて心木しか残っておらず、まるでフリオ・ゴンザレスの彫刻みたいにモダンに見えるのだ。

2018/11/11(村田真)

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