artscapeレビュー
竹内公太「盲目の爆弾」
2019年04月15日号
会期:2019/03/08~2019/04/13
SNOW Contemporary[東京都]
第2次大戦末期に日本はアメリカに向けて風船爆弾を飛ばした。といっても、直径10メートルほどの風船につけた爆弾が風に乗って飛んでいくだけなので、どれだけ目標に届いて被害を与えられるかわからない、いわば「盲目の爆弾」だった。実際には9,300発ほど飛ばして相当数が西海岸に着弾し、民間人6人を殺害したという。この計画にどれだけの予算が費やされたのかは知らないが、きわめてコストパフォーマンスの悪い作戦であったことは確かだろう。福島県在住の竹内は、いわき市も放球地のひとつだったことから調査を開始。アメリカの国立公文書館に足を運んで資料を読み、目撃者にインタビューし、実際の着弾点を訪れ、ドローンを飛ばして爆弾が最後に「見た」であろう光景を撮影。今回はそれを編集した映像作品《盲目の爆弾、コウモリの方法》を流している。
だが、風船爆弾の記録を追跡しただけならただのドキュメンタリー映画に過ぎず、わざわざギャラリーで発表することもない。竹内らしいのは、映像の随所に手のひらに目がついた妖怪「手の目」や、目ではなく耳で外界を知るコウモリを登場させていることだ。これは風船爆弾のような「盲滅法」の作戦が、勝算のないまま「手探り」で戦争に突入した日本軍の杜撰な体質に由来することを物語っている。コウモリが登場するのは、風船爆弾から70年以上たって文書を手がかりに目的地にたどり着いたことが、コウモリのエコーロケーションを思い出させるからだそうだ。
2019/03/23(土)(村田真)