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POP-UP SHOP 福永紙工×21_21

2019年04月15日号

会期:2019/04/10~2019/04/22

21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3[東京都]

会場に入ると、宙には無数の「空気の器」がふわふわと浮かんでいる。福永紙工の代表製品のひとつで、デザインしたのはトラフ建築設計事務所。円形の紙に幅0.9ミリ単位で点線状の規則的な切り込みが入っており、紙を引っ張り上げることで、網目状の器が自在にできあがるという製品である。平面から立体へという驚きもそうだが、簡単に破れたりへたりそうに見える繊細な紙が、器状になることで案外と強度と張りが増すという実態にも驚く。紙なのに、まさに器としての機能を果たすのだ。

そうした「紙なのに」という驚きの製品が、福永紙工ではたくさん生まれている。なぜか。それは同社が自社工場内で印刷から加工までを一貫して行なうことができる強みを生かし、多くのクリエイターと協働して、オリジナル製品の開発を積極的に行なっているからだ。こうした開発は、2006年に発足されたプロジェクト「かみの工作所」から始まった。発足から10年以上が経ったいま、プロジェクトや製品数はどんどん増え、同社は多くの人々に認知されるクリエイティブな紙工会社へと成長した。何より同社とクリエイターとの信頼関係が各プロジェクトを支えている。

展示風景 21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3

本展は「POP-UP SHOP」と謳っているとおり、展示販売を目的としている。しかし製品をあれこれと観ているだけでも楽しい。そして結局は手に取って楽しく触っているうちに、つい購入したくなるのである。小さな紙製品ゆえに購入しやすい価格帯で、また実用的とは言い難いのに、なぜか欲しくなる魅力を備えているからだ。例えば「空気の器」と並んで、もうひとつ有名な代表製品が「TERADAMOKEI」である。これは建築家の寺田尚樹がデザインした「1/100建築模型用添景セット」が始まりで、もともとは「建築模型をつくる際に添える人や家具、街路樹などをあらかじめ既製品にしておくと便利なのでは」という建築家らしい発想から生まれたもの。しかしシリーズが大量に増えたいまでは、建築家向けというより、一般の人が楽しむコレクションアイテムと化した。紙のプラモデル感覚で、パーツを切り離して組み立て、ある種のジオラマとして楽しむ製品となっている。ものづくりに携わる企業のブランド価値をどう上げ、世間にPRしていくか。人々の心をくすぐる愛らしい製品をつくり発信することに尽力する福永紙工に、学ぶべき点が多くあるように思う。

展示風景 21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3

公式サイト:https://www.fukunaga-print.co.jp/shikoutsushin/event/2019/190325-1/
      https://goo.gl/HruQQw

2019/04/11(木)(杉江あこ)

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