artscapeレビュー

平本成海「GOOD NEWS」

2021年10月01日号

会期:2021/08/16~2021/10/02

PGI[東京都]

当時は「H/N」という名前で発表していた平本成海の作品を、ガーディアン・ガーデンの写真「1_WALL」展の審査で初めて見たのは2017年だった。その後、彼は2019年の第20回写真「1_WALL」展でグランプリを受賞し、2020年に受賞展を開催した。今回のPGIでの個展はそれに続くものである。

平本は2016年から、住んでいる千葉のローカル紙の記事から切り抜いた写真を用いて、「一日一点」のコラージュ作品を制作するようになった。それらをその日のうちにInstagramにアップすることを日課としている。今回の個展では、もう4年余りも続くその制作活動から産み落とされた写真群を、フレームに入れて淡々と壁に並べていた。それとは別に、写真を元にテキストを作成する試みもあって、そのごく一部が展覧会のリーフレットの裏に掲載されていた。また、写真家・作家の清水裕貴が平本の作品から「Diary: 平本成海」という日記形式のテキストを綴ったものもあり、こちらはPGIのホームページに掲載されている。

丹念に、よく考えられた制作行為の積み重ねであり、一見ラフなようで「1px単位の繊細な編集がされている」という作品の精度も、以前よりも格段に上がってきた。日常の出来事が孕む「無気味さ」が、じわじわと滲み出てくる作品が多い。ただ、写真作品とテキストの関係については、もっとやりようがあるのではないかと思う。清水裕貴とのコラボレーションも悪くはないが、平本自身の言語能力の高さをもっと活かして、組織的に展開するべきではないだろうか。たとえば、安部公房が『箱男』(1973)で試みた、写真とテキストとのコラージュ的な併置を、デジタル時代のメディア表現として再編するようなこともできそうな気がするのだが。

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