artscapeレビュー
原久路&林ナツミ「セカイヲミツメル」
2022年03月01日号
会期:2022/01/06~2022/02/07
リコーイメージングスクエア東京[東京都]
東京でユニットとして活動していた原久路&林ナツミは、東日本大震災後の2014年に大分県別府市に移住した。そこで、偶然の機会からひとりの少女に出会い、彼女を撮影したことから写真シリーズ「セカイヲミツメル」を構想する。「少女たちのまなざし」に魅せられ、「芝居がかった華やぎから、物憂い真面目さへと一瞬ごとに移ろうきらめき」を捉えようとしたのだ。本展には同シリーズから約40点が展示されていた。
むろん、ただの「美少女写真」ではない。原と林は、スナップショットと演出写真の要素を巧みに使い分け、さまざまなアイディアを的確に実現していく。デジタル画像特有の合成や加工も無理なく取り込んでいた。さらに、この年頃のモデルたちのなかに潜んでいる残酷さやビザールさも見過ごしてはいない。棒のようなものを手に、もうひとりの自分を冷酷に見据える少女(《双子ごっこ》と題されている)、水を吐く少女、巨大化した少女など、「美少女写真」の範疇を乗りこえていこうという意欲を感じる。
ただまだ全体的に、どこか絵空事めいた気分が漂っていることは否定できない。原の旧作「バルテュス絵画の考察」(2009)や林の「本日の浮遊」シリーズ(2011~)から強く伝わってきた、「これを見せたい」という切実さが、本作にはあまり感じられないのだ。いい作品もあるが、まだ習作の段階のようなものも目につく。たとえばひとりの少女、あるいはひとつのコンセプトに徹底してこだわることも、考えていいのではないかと思う。
2022/02/04(金)(飯沢耕太郎)