artscapeレビュー

立川 清志楼/長島 勇太/garland/李 和晋 映像作品展 はじまりの残像

2022年03月01日号

会期:2022/02/04~2022/02/17

Sony Imaging Gallery[東京都]

静止画像を撮影するカメラに動画機能が加わり、精度の高い映像を得ることができるようになった。また、壁に掛けて映像作品を鑑賞することができるモニターの精度も上がってきた。写真作品の専門ギャラリーや写真展を開催する美術館などのスペースで、映像作品を展示するのも当たり前になってきている。その状況の一端を、東京・銀座のSony Imaging Galleryで開催された4人展でも確認することができた。

立川清志楼は「第一次三カ年計画 Selection remix」(2020-2023)と題する連作を出品し、固定カメラで撮影した映像に多重化、アニメーション化などの操作を加えて加工・編集した。長島勇太は《複眼(8つの部分をつなげる)》で、8分割した場面をコラージュ的に構成している。garlandは《Past Light》《Lycoris》《WAVE》の3作品を、それぞれ「彼岸」「此岸」「その合間」というコンセプトで再構築する。李和晋(Hwajin Lee)は「Saudade Project」で、「家族写真が撮影された場所」を探し求める旅の記録を《伊豆》編《新潟と韓国の龍仁》編の2作品にまとめた。

4人とも、映像作品の可能性をそれぞれのやり方で追求しており、作品自体のクオリティも高い。ただ、なぜこの4人なのかという柱の部分が不明確なので、各作品がむしろ互いに相殺しあっているように見えた。それと、静止画像の写真作品をずっと見続けてきた筆者にとっては、映像作品の鑑賞時間がひどく長い(むしろ退屈な)ものに感じてしまう。写真作品と映像作品の見方を切り替えるスイッチが、当の作品のなかに組み込まれているといいのだが、と思ってしまった。写真ではなく映画でもない映像作品には、独自の時空間構築の原理が求められるということでもある。

2022/02/07(月)(飯沢耕太郎)

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