artscapeレビュー

Hello! Super Collection 超コレクション展 ―99のものがたり―

2022年04月01日号

会期:2022/02/02~2022/03/21

大阪中之島美術館[大阪府]

昨年、国立国際美術館を訪れたら隣に黒い大きな箱が建っていたので驚いた。そういえば、これがウワサの大阪中之島美術館か、ようやくできたんだと納得。中身はさておき、建物だけは目立ちたがる日本の美術館にあって、隣の国立国際は地下に埋め込まれているし、当館はブラックボックスだし、この一角だけはあまり目立たない。いや、意外とこのブラックボックス、よく目立つかも。

それにしても長かった。バブルのころから大阪に近代美術館の建設構想があるという話は聞いていたし、その準備室の学芸員にも何人かお会いしたことがある。だが、バブル崩壊後の長引く不況で計画は宙に浮き、学芸員も他館に移動したり退職したり三々五々。このまま永遠に開館しない「幻の美術館」で終わるんじゃないかと心配したもんだ。そもそもの始まりは1983年、大阪市制100周年を記念して近代美術館構想が発表され、佐伯祐三の作品を核とする山本發次郎コレクションが寄贈されたこと。1990年には準備室が設けられ、コレクションも寄贈や購入により増えていったが、景気の低迷に伴い計画は紆余曲折を余儀なくされた。ようやく10年前に大阪の心臓部ともいえる中之島に建設が決定し、昨年には遠藤克彦建築研究所の設計による建物が竣工。今年2月2日に一般公開となった。

コレクションはおよそ6,000点で、日本と西洋の近現代美術と、椅子やポスターなどのデザインが2本柱。開館記念展ではそのなかから、佐伯祐三をはじめ上村松園、小出楢重、吉原治良ら主に関西の画家の作品、モディリアーニ、ユトリロ、マグリットら西洋の絵画、ロートレックやボナールのポスター、マッキントッシュやリートフェルトらの椅子など約400点を選んでお披露目している。新しいところではゲルハルト・リヒター、ジャン・ミシェル・バスキア、森村泰昌、やなぎみわら、古いところでは、なぜかアルチンボルドの作品も。日本と西洋、近代から現代、美術とデザインと幅広く集めているが、これが30年前ならまだしも、21世紀も20年以上が経過したいまとなっては遅きに逸した感もある。いまさらエコール・ド・パリでもないし、現代美術やデザインの収集も珍しくなくなったし。

一方、出品作品でいちばん興味を惹かれたのは、国枝金三と青木宏峰による《中之島風景》や、池田遙邨の《雪の大阪》、小林柯白の《道頓堀の夜》、島成園の《祭りのよそおい》や木谷千種の《をんごく》といった、関西の画家による戦前の大阪の風景や風俗を描いた絵だ。1点1点はどこかで見たことあるけど、こうしてまとめて見るのは初めてのことで新鮮に感じられた。考えてみれば、大阪には大規模な美術館として戦前からの市立美術館と、郊外から移転してきた国立国際美術館があるが、前者がもっぱら団体展や巡回展の会場となり、後者が文字どおり国際的な現代美術に特化しているため、地元ゆかりの美術作品を見る機会は限られていた。この美術館にはその隙間を埋め、東京では見られない(また、京都とも少し違う)なにわ美術のアーカイブと、これからの大阪のアートシーンを牽引していく活動を期待したい。

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