2022年08月01日号
次回9月1日更新予定

artscapeレビュー

西野壮平「線をなぞる "tracing lines"」

2022年04月01日号

会期:2022/01/20(木)~2022/03/07(月)

キヤノンギャラリーS[東京都]

西野壮平の写真世界は、このところ大きく拡張し、多面的に展開しつつある。今回のキヤノンギャラリーSでの個展に出品されたのは、5つのプロジェクトによる約100点の作品だった。

イタリアのポー川の流域、650キロを移動して撮影した写真をコラージュと単写真を組み合わせて提示した「IL PO」(2018)、北海道の知床半島とロシアのマガダンを繋いで、流氷の起源を探る「A Journey of Drifting Ice」(2019)、大和絵や「400年前の絵図」を下敷きに富士山を再構築する「Mountain line “Mt Fuji”」(2021)、同様の手法でエベレスト山に向かうトレッキングのルートを辿った「Mountain line Mt. “Everest”」(2019)、西伊豆・戸田の港で船のロープの光跡を追った連作に、波を撮影した写真によるコラージュ作品を加えた「WAVES, Study of Anchorage」(2020-)の5作品とも、充実した内容であり、西野の表現のスケール感がより増してきていることがわかる。

これらの作品に絵空事ではない厚みと必然性を感じるのは、どれも西野自身の身体性にしっかりと根を下ろしているからだろう。ヴァーチャルなネット空間ではなく、光と熱と手触りを備えたリアルな現実世界を、生身の身体で移動し、シャッターを切り、現像・プリントした写真を、これまた長い時間をかけ、全身全霊を傾けて大画面に貼り付けていく──それらの行為の実感が作品の隅々から感じられるところに、西野の仕事の魅力がある。今回の展示に関しては、メイキング・ビデオを含めて、その制作のプロセスを開示していく姿勢が徹底していた。いわば西野と一緒に、生々しい作品制作の現場に立ち会っているような感覚を味わうことができるのがとてもよかった。

2022/03/04(金)(飯沢耕太郎)

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