2022年09月15日号
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artscapeレビュー

写真発祥地の原風景 幕末明治のはこだて

2022年04月01日号

会期:2022/03/02~2022/05/08

東京都写真美術館 3階展示室[東京都]

東京都写真美術館は2007年から2017年にかけて「夜明けまえ 知られざる日本写真開拓史」展を5回にわたって開催し、2018年からは「写真発祥地の原風景」と題する新たな連続展をスタートさせた。本展は「長崎」編に続くその第2弾である。

幕末から明治にかけて、「箱館」から「函館」に表記が変わった北海道南部の港湾都市「はこだて」には、長崎や横浜といったほかの「写真発祥地」とは異なる特徴がある。写真術の渡来、伝承において、初代ロシア領事のゴスケーヴィチ、同領事館付属病院の医師ザレスキー(ゼレンスキー)など、ロシア人がかなり深く関与しているのだ。彼らから技術を学んだ、横山松三郎、木津幸吉、田本研造をはじめとして、独自の写真文化が花開いていった。また、札幌に北海道開拓使が設立された明治以降は、田本、ライムント・フォン・シュティルフリート、武林盛一らが、その命を受けて開拓の状況を克明に記録していった。今回の展示では、それら草創期の写真、絵画、印刷物などを中心に、「はこだて」が視覚メディアにおいて、どのように扱われていったかを、多面的に提示している。

展示の内容は、さまざまな媒体をちりばめつつ、観客のイマジネーションを大きく膨らませるものになっており、あらためて「初期写真」の可能性の大きな広がりを感じた。写真帖『Esso Album』で、アイヌ人の生活を撮影した野口源之助の仕事のような、新たな発見もあった。ただ、これまでの展示活動の蓄積を踏まえると、そろそろ幕末~明治初期の日本の写真のあり方について、総体的、包括的な枠組みを明確に打ち出していくべきではないだろうか。小出しではなく、15年間の企画を総ざらいするような大規模展が必要なのではないかと思う。

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