artscapeレビュー
池崎一世・佐藤麻優子・染井冴香展「whereissheus」
2022年04月01日号
会期:2022/02/08~2022/03/19
ガーディアン・ガーデン[東京都]
チラシや広報ページを見た限りでは、企画意図がうまくつかめない展覧会だと思っていたのだが、実際に展示を見ると、じわじわと面白さが伝わってきた。
池崎一世、佐藤麻優子、染井冴香の3人は、ガーディアン・ガーデンで開催されている公募展、写真「1_WALL」でグランプリ、あるいはファイナリストに選出されており、今回の展示は、「公募展の入選者たちの、その後の活躍を紹介する」という「The Second Stage at GG」の枠で開催されている。世代も作風も完全に重なっているわけではないが、3人とも自らの生活を起点として、日常的な事物に目を向けることが多いこと、あらかじめ明確なコンセプトを打ち出すよりは、まずは撮影することから認識を組み上げようとしていること、画像の加工はほとんど行なわず、ストレートな描写を心がけていることなどが共通している。その3人の指向性がうまく絡み合って、既視感と脱力感を感じさせるユニークな写真の世界が成立していた。カラフルなつけ鼻や角を付けたり、顔を黒く塗ったり、クリスマスツリーのような姿になったりといった、パフォーマンス的な要素を取り入れた作品も多いのだが、自然体であっさりと処理されているので、見る者に余分な負担を強いない。にもかかわらず、日常に潜む無意識レベルの不気味さが、しっかりとあぶり出されてきているのが興味深かった。
この3人のユニットでの活動が、これから先も続くのかどうかはわからない。だが、まだいろいろな可能性を孕んでいるようにも見える。ソロ活動とうまく絡めていくと、何か思いがけない世界が開けてくるのではないだろうか。
2022/03/03(木)(飯沢耕太郎)