artscapeレビュー

大須賀薫「label」

2023年04月15日号

会期:2023/02/28~2023/03/12

TOTEM POLE PHOTO GALLERY[東京都]

大須賀薫は1998年生まれ、2021年に日本写真芸術専門学校を卒業し、同年からTOTEM POLE PHOTO GALLERYのメンバーとして活動するようになった。以後、同ギャラリーを舞台に意欲的な展示を展開している。

今回の「label」では、日常の事物を撮影した画像を印画紙にコラージュ的にプリントし、その一部を捲りあげたり、色味、あるいはネガ・ポジを転換したりするような操作を加えている。画面処理そのものに新味はないが、画像の選択が的確なのと、触覚的な要素を強調していることで、われわれが現実世界に「無意識のうちにラベルを貼り」、それらを「平たく、薄っぺらなもの」として認識しているのではないかという彼の疑問によく応えた作品として成立していた。大きく引き伸ばしたプリントの裏から、重ね合わせるようにセルフポートレートと思しき画像を投影するインスタレーションも並置されていて、トータルな会場構成もうまくいっていたのではないかと思う。

次に必要なのは、より深く「無意識」の領域に探りを入れ、自分にとって何が重要なのかをつかみとり、それをしっかりと形にしていくことだろう。被写体の幅をもう少し絞り込んでいくことも考えられそうだ。写真集の刊行や、TOTEM POLE PHOTO GALLERY以外の場所での展示も模索していってほしいものだ。


公式サイト:https://tppg.jp/label/

2023/03/09(日)(飯沢耕太郎)

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