artscapeレビュー

真月洋子「a priori」

2023年04月15日号

会期:2023/03/13~2023/03/18

巷房・1[東京都]

先に本欄で紹介した初芝涼子「Consciousness」もそうなのだが、東京・銀座の巷房では、いい仕事をしているのだが、これまであまり見る機会がなかった写真家の作品が展示されることがある。今回の真月洋子展も、とてもクオリティが高く見応えのある展覧会だった。

真月は1998年~2004年に「a priori」と題した写真シリーズを制作し、2013年には同名の写真集を蒼穹舎から刊行している。今回の展示作品は、その続編というべきだろう。だが、同じく身体(ヌード)と植物(花)というテーマを扱っていても、旧作と新作ではかなり肌合いが違ってきている。以前は身体に直接、植物の画像を投影して撮影していたのだが、今回は複数の画像を合成してプリントした。そのことで、視覚的な要素よりも「皮膚から皮膚へと直接語りかける」触覚的な要素がより強調されるようになり、画像の緊密度が上がってきた。

また、真月がなぜ身体と植物との関係性にこだわるのかが、丁寧に仕上げられたコロタイプによる緻密な画像によって、説得力をもって表現できるようになった。真月は、植物を媒介にすることで、「時間の経過がひとの体にもたらすもの」をくっきりと浮かびあがらせることができると考えているようだ。今後は、ひとつの画面に収束するのではなく、複数の写真を組み合わせて並置することで、大判プリントによる、より広がりのあるインスタレーションも可能になるのではないだろうか。

なお、今回も展覧会に合わせて写真集『a priori』(蒼穹舎)が刊行された。印刷に気を配った丁寧な造本の写真集である。

2023/03/15(水)(飯沢耕太郎)

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