artscapeレビュー

佐藤信太郎「Boundaries」

2023年04月15日号

会期:2023/03/23~2023/05/13

PGI[東京都]

佐藤信太郎は東京とその近郊の都市環境を、精密に測定して撮影するようなスタイルの作品を発表してきた。本作「Boundaries」もその延長上にあるシリーズだが、手法も見た目もかなり違ったものになってきている。

佐藤が今回、被写体として取り上げたのは、崖のように切り立った起伏のある地形の場所である。かつては海と陸の境界線上に位置していたそんな場所には、さまざまな草木が生い茂り、「垂直に迫り上がっていく森」の様相を呈している。佐藤は撮影後に写真をプリントし、何気なく少しずらして重ねて置いていた。それを見て、複数のプリントが互いに干渉することであらわれてくる時空間の面白さに気がつく。そこから、四季を通して撮影した画像から自在にイメージを切り出し、微妙に重ね合わせながらほかの画像と「リコンバイン」(recombine=組み替え)していく本シリーズを発想するに至った。

最初の頃は、画像を直線的に切りとっていたが、次第に植物の輪郭をそのまま利用して複数のレイヤーを重ねたり、ふたたび引き剥がしたりするやり方をとるようになる。結果として、「Boundaries」シリーズは、より抽象度を増し、「上とも下ともいえないゆらぎ」を備えた時空間を定着する、ユニークな作品として形をとっていった。

今回の展示は、プリントに白いオーバーマットをかけ、写真用のフレームにおさめたオーソドックスなものだった。だがこのシリーズは、より大きくプリントしたり、横長に繋げたりすることによって、写真作品の枠を超えたインスタレーションとして展開できる可能性をもっているのではないだろうか。さらにまだ先がありそうだ。


公式サイト:https://www.pgi.ac/exhibitions/8566

2023/03/24(金)(飯沢耕太郎)

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