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ニコンサロン年度賞2022受賞作品展 第47回伊奈信男賞 宮田恵理子「disguise」

2023年04月15日号

会期:2023/03/28~2023/04/10

ニコンサロン[東京都]

宮田恵理子は2022年11月にニコンサロンで写真展「disguise」を開催した。それが同年度のニコンサロンでの展覧会の最優秀作品に授与される伊奈信男賞を受賞し、同会場でアンコール展が開催されることになった。

あらためて作品を見ると、その高度な制作意識と会場構成が印象深く目に映る。宮田が主に取り上げたのは、チューリヒ芸術大学大学院に留学中に着目した、第二次大戦中に建造されたトーチカ、陣地壕、監視小屋などである。スイスといえば平和を志向する永世中立国というイメージが強いが、実は第二次世界大戦中に「Réduit(レデュイット)」と称される軍事政策を秘密裏におこなっており、現在に至るまで国防意識はかなり強い。宮田はアルプス山中にカムフラージュされるように設置されたそれらの軍事施設、防空壕を兼ねたトンネル、国家意識を称揚する展覧会のポストカードや切手などの写真を的確に配置することで、「神話と国家が近づいた時の物語とその背景」を提示しようとした。写真を通じて、「目に見えない立場を象徴しているような風景」を浮かび上がらせるというその意図は、とてもうまく実現していたと思う。

宮田はスイス留学前には東京藝術大学の先端芸術表現学科で学んでいたが、その時には写真作品を発表することはなかった。スイスで「disguise」を制作するにあたって、はじめて写真の撮影、プリントに本格的に取り組んだというが、そうは思えないほどに作品の完成度は高い。被写体との距離感、周囲の環境への配慮、大きさを自在に変えたプリントの配置など、展示には写真家としてのベーシックな才能が充分に発揮されていた。今後の活動も大いに期待できそうだ。

なお、本展に続いて「ニコンサロン年度賞2002受賞作品展」の一環として、若手作家の最優秀作品に授与される第24回三木淳賞を受賞した宛超凡の展覧会「河はすべて知っている―荒川」(4月11日~4月24日)が開催される。


公式サイト: https://www.nikon-image.com/activity/exhibition/thegallery/events/2023/20230328_ns.html

2023/03/28(火)(飯沢耕太郎)

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