artscapeレビュー

井上廣子 展 Inside-Out むこう側の光

2010年03月01日号

会期:2010/02/10~2010/02/21

ギャラリーヒルゲート[京都府]

欧米と日本の精神病院を取材した写真シリーズ。展示には床置きのライトボックスを使用し、裏側から光を当てるスタイルが採られた。写っているのは病室の様子で、人間は写っていない。作家が在廊していたので説明を聞いた。欧米、特にイタリアでは精神病院を減らす方向にあり、患者も一般病院に通院・入院させる流れになっているらしい。また、投薬量も日本に比べると大変少ないとも。国ごとに事情があるのでその是非は判断しかねるが、ジャーナリスティックな視点に基づく骨太な写真表現を久々に見たように思う。また、彼女が在住するドイツの美術業界事情にも話題が及んだ。さしものドイツも不況の影響で予算を削減せざるを得ず、アーティストの待遇や企画展の頻度が減っているらしい。どこも大変なんだなと、改めて実感した。

2010/02/11(木)(小吹隆文)

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