artscapeレビュー
オットー・ディックスの版画 戦争と狂乱──1920年代のドイツ
2010年12月01日号
会期:2010/11/03~2010/12/19
伊丹市立美術館[兵庫県]
オットー・ディックスの版画を初めて知った時の衝撃は、今でもはっきり覚えている。第一時大戦の最前線における、暗くじめじめした塹壕、鉄条網に引っかかった遺体の一部、発狂寸前の兵士の顔……。一転、1920年代ベルリンの情景も忘れ難い。繁栄の陰でうごめく、娼婦、傷痍軍人、殺人者たちの姿を、グロテスクに活写した作品群だ。これまで断片的にしか見られなかった彼の版画を、初めてまとめて見ることができた。その印象は、やはり強烈。ずしりと重いパンチが、次々に打ちこまれてくるかのようだ。ディックスが今の世に現われたらどんな絵を描くのだろう。ふとそんな想像が頭をよぎった。
2010/11/07(日)(小吹隆文)
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