artscapeレビュー
黙示録──デューラー/ルドン
2010年12月01日号
会期:2010/10/23~2010/12/05
東京藝術大学大学美術館[東京都]
ヨハネがキリストから啓示されたという新約聖書の最後を飾る預言書、「黙示録」。本展は、アルブレヒト・デューラーによる木版画集《黙示録》を中心に、デューラー以前に木版挿絵として描かれた黙示録や、デューラーの影響を大きく受けたというルドンによる《ヨハネ黙示録》など、100点あまりを一挙に公開するもの。展示の構成を、デューラー以前とデューラー以後を明確に区切っているため、デューラーの《黙示録》の迫力がよりいっそう際立っている。他と比べて圧倒的に大きな版型、緻密でありながら力強い描線、そして躍動感と物語性の高い人物描写。デューラーの前後が丸ペンで描いた少年マンガだとすれば、デューラーの黙示録は劇画調の青年マンガであるといってもいい。なかでもとりわけ突出しているのが、人物の顔を一人ひとりじつに豊かに描き分けている点だ。奇怪な造作はまるで曽我蕭白によるそれのようでもあり、時代こそ異なるにせよ、両者の奇特な視線はどこかで通底しているような気がしてならない。
2010/11/18(木)(福住廉)