artscapeレビュー

岡崎藝術座『古いクーラー』

2010年12月01日号

会期:2010/11/19~2010/11/28

シアターグリーン・BIG TREE THEATER[東京都]

7人の人物が1人ずつ舞台中央に現われ、次々と独演する。それぞれのしゃべりには各々異なるエフェクトが与えられている。だじゃれとか、強圧的な怒鳴り声とか、「です」でいい語尾が「ですます」になっているとか。一貫しているのは、どれも「はずしている」こと。そのイタさは「ドゥーン」(村上ショージ)級。話の中身は多くが愚痴で、怒りが無思慮に放出されるたびに観客はあちこちで爆笑する。見ているうちに「悪意」という語が浮かぶ。7人のしゃべりにも時折登場していた古いクーラーが、終わりのほうで登場する。彼(クーラー)は30才と自称。空気の読めない彼は、最後にパンツを脱いで悪意をまき散らす。この30年で棄てられる運命のクーラーは、作者の神里雄大(作・演出)あるいは彼世代の自画像のようにも映る。強烈な虚無感と閉塞感が漂う。そうしたいらだちが見るべきものになっているのは、はずす演技を巧みにこなす役者たちの力量のおかげだろう。「悪意の芸術的昇華」という試みは、おそらくもっと高い到達点が設定されているのだろうが、現時点でも見応えはありゆえに後味は悪くはないが、しかしやはり暗くなる。

2010/11/26(金)(木村覚)

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