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2009年03月01日号のレビュー/プレビュー

Media Practice 08-09 東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻年次成果発表会

会期:2009/01/17~2009/01/25

BankART Studio NYK[神奈川県]

東京藝大の映像科による成果発表展。いわゆる「メディアアート」の範疇に行儀よく収まる作品が多く、仕上がりのよさについては質が高いのかもしれないが、逆にいうと破綻がなく、面白みに欠ける。「商品」に発展する可能性が望める反面、「作品」としては魅力に乏しいものが多かった。

2009/01/25(日)(福住廉)

せんたんまる 東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了制作展

会期:2009/01/17~2009/01/25

BankART Studio NYK[神奈川県]

先端のお家芸だと思っていたプロジェクト系の作品が激減したせいなのか、あるいは学生が小ぶりになっているのか、それとも教員による指導がトンチンカンで的外れなのか、ほとんど印象に残っていない。抜群におもしろかったのは、一般から募ったアイデアを愚直に実行する南川憲二による《Wah Document》。一万本の「うまい棒」で壁をつくったり、地中に家を建てたり、またまた一万個の蛇花火に着火したり、社会にとっての有益性を追及するアートプロジェクトとは真逆の、社会的にはまったく無益な計画を実現化させる潔さが気持ちいい。たしかに短絡的には無駄なのかもしれないが、芸術という時空を超えた長期的な物語に乗るのであれば、無益のなかから有益の萌芽を見出すことができるくらい徹底した無駄を見せてほしい。それこそ「先端」ではないのか。

2009/01/25(日)(福住廉)

PROJECT the PROJECTORS 2009 東京藝術大学美術学部先端芸術表現科卒業制作展

会期:2009/01/17~2009/01/25

ZAIM[神奈川県]

先端の学部生による卒制展。これもいたって地味で、ほとんど印象に残っていない。学部生なんだから、もっと滅茶苦茶にやってやればいいのに、どれもこじんまりとしていて、退屈である。そうしたなか、色とりどりのポストイットを室内の床一面に立てて、色面分割してみせた前川愼生の《Viral colors》は、単純明快な発想を安価な素材で実現するというアートの醍醐味を存分に見せていたと思う。

2009/01/25(日)(福住廉)

「静物」才木寛之 展

会期:2009/01/26~2009/01/31

番画廊[大阪府]

発泡スチロールの芯に革を張った才木の作品は、身体の一部のような生々しさと、ある種のエロティシズムが特徴だ。しかし、今回発表した新作では、頭蓋骨を思わせるフォルムへと進化が見られた。これは、芯を木で造形したり、一枚の革で全体を覆うなど、制作方法の変更に依るところが大きい。なかでも、表面に現われた複雑な凹凸模様(肉食恐竜の牙を思わせる)は大きな魅力である。

2009/01/26(月)(小吹隆文)

Multiple Worlds

会期:2008/11/05~2009/01/31

ARATANI URANO[東京都]

淺井裕介、泉啓司、西村知巳によるグループ展。白い壁面を泥絵で埋め尽くした淺井が圧巻の展示を見せた。屋上へ通じる階段の汚れた壁を消しゴムで消すことで樹を描いた作品など、空間の使い方も抜群にうまい。

2009/01/27(火)(福住廉)

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