artscapeレビュー

2009年03月01日号のレビュー/プレビュー

杉田和美 写真展

会期:2009/01/19~2009/01/31

コバヤシ画廊[東京都]

写真家・杉田和美による恒例の写真展。この1年あまりのあいだに展覧会のオープニングを撮影した写真を発表した。作品を中心として展覧会会場を撮影した写真は数あるが、その前触れとして必ず催されている「オープニング・レセプション」という恒例行事はほとんど記録に残されていない。現代美術史を編纂するためにも、ぜひ写真集としてまとめられることを願う。

2009/01/29(木)(福住廉)

加賀美健「TOYS“A”SS トイズアス」

会期:2009/01/17~2009/01/31

タカ・イシイギャラリー[東京都]

展覧会のタイトルが示しているように、トイザラスへのオマージュなのか、アイロニーなのか、色とりどりの玩具を組み合わせたオブジェを発表。プラスティック製の玩具やぬいぐるみによって、性や暴力、排泄物などのテーマが強調されていたが、90年代後半以後の「かわいい」と「おぞましい」を同時に見出す言説でしかとらえられないところが、もどかしい。

2009/01/29(木)(福住廉)

久保田弘成 展 泥匂崇拝──アイルランド廻車報告

会期:2009/01/23~2009/02/04

MAKII MASARU FINE ARTS[東京都]

久保田は、車の中央部にシャフトをぶち込み、外に移したエンジンによってその車体を回転させるアーティスト。会場には、吉田松陰の図像を塗りつぶした刺青を背中に、ふんどし一丁の久保田が、北島三郎や細川たかし、前川清といったド演歌をガンガンに鳴り響かせながら、アイルランドの地でフォード車をぐるんぐるんとまわす公開パフォーマンスの映像などが発表された。意気揚々とアクセルを吹かし続けるその姿は、圧倒的にバカバカしく、だからこそ痛快であり、抜群にかっこいい。横浜で発表される予定だという次回作を期して待ちたい。

2009/01/31(土)(福住廉)

山田郁予 展 いいわけ

会期:2009/01/10~2009/02/07

高橋コレクション[東京都]

トレーシングペーパーをつなぎ合わせた巨大な画面に描かれた少女マンガ的な女性像。半透明の紙にのせられた淡い色彩がいかにも内向的で繊細な精神性を物語っているが、ペーパーをくしゃくしゃにして皺だらけにしているところが暴力的な苛立ちを感じさせる。ファイルには絵とともにメッセージが書きつけられていたが、会田誠が「殺伐とした言葉と同居する一種のユーモア感覚」と評しているように、むしろ言葉のセンスのほうが光って見えた。相田みつをのネガとしておもしろい。

2009/01/31(土)(福住廉)

石川真生 写真展 Laugh it off!

会期:2009/01/30~2009/02/28

TOKIO OUT of PLACE[東京都]

写真家・石川真生の写真展。過去にアメリカやフィリピンで撮影されたフィルム写真のほか、おなかの人工肛門を堂々と見せつけるポートレイトを携帯で撮影した写真を発表した。いずれも石川真生でなければ撮影できなかった写真であり、だからこそそれらの写真には彼女の生き方が凝縮している。といっても、それは決して「写真家」という安手のロマンティシズムが発露されているわけではなく、むしろ写真云々以前に彼女の「生」がその場に根づいているということを物語っていた。写真の価値がむやみに上昇している昨今、肝心なのは写真より「生」そのものだということを、石川の写真は教えてくれる。

2009/01/31(土)(福住廉)

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