artscapeレビュー

2009年03月01日号のレビュー/プレビュー

田中真吾 個展「夢と現」

会期:2009/02/01~2009/02/28

eN arts[京都府]

パネルに漆喰を塗り込め、その上で紙を燃やしたり、画用紙を何重にも重ね貼りしたパネルをバーナーで焼いて作られる田中真吾の作品。火をモチーフにしたアート作品は数あれど、燃焼という現象自体をダイレクトに表現へと転化しているのが彼ならではの特徴である。焼け焦げた表面が見せる複雑な表情と、圧倒的な存在感が魅力的。今回は、立体、半立体、写真と、作品のバリエーションも豊富で、彼を初めて知る人にも最適の内容だった。

2009/02/01(日)(小吹隆文)

高橋匡太 展“Roomers”

会期:2009/02/01~2009/02/21

MATSUO MEGUMI+VOICE GALLERY pfs/w[京都府]

JR京都駅南側へと移転したヴォイス・ギャラリーのオープニング展。十和田市現代美術館の外壁を彩る照明のインスタレーションで知られる高橋匡太が、昨年のソウル・ビエンナーレ出品作をバージョンアップして披露した。作品は6つの映像がシンクロして明滅するもので、一つのテーブルを軸に男女の物語がシルエットで展開される。実はこの男女は別々に撮影されていて、二人の物語というのは見る側の思い込みに過ぎない。説明的要素を極力排することで、コミュニケーションの妙を浮き彫りにした本作。高橋の手腕が鮮やかに示されていた。

2009/02/01(日)(小吹隆文)

岩井優 展 CLEAN UP 1.2.3.

会期:2009/01/21~2009/02/01

Art Center Ongoing[東京都]

美術家の岩井優が近年熱心に取り組んでいるのが、なんでも洗える洗剤でなんでも洗ってみる、ということ。世界各地で収集してきた色とりどりの洗剤を並べた展示のほか、その場に置かれた巨大な水槽の中で食材を洗うパフォーマンスを記録した映像作品、ラグジュアリーブランドの旗艦店の外壁を勝手に清掃するゲリラ・パフォーマンスの映像作品などを発表した。水槽の中で洗われるのは、ジャガイモ、人参、牛肉にはじまり、生魚、スニーカー、自分の頭髪にいたるまで、とにかく「なんでも」に徹底しているところが、潔い。しかも洗った食材はきちんと調理して食べていたというから、岩井の清掃アートはアヴァンギャルドのシミュレーションなどではなく、むしろエコ・アートなのだ。界面活性剤でピカピカに光る表面に、同時代的なリアリティを強く感じた。

2009/02/01(日)(福住廉)

We dance:神村恵「Seeing is believing.」

会期:2009/01/31~2009/02/01

横浜市開港記念会館[神奈川県]

ソロ作品。冒頭、南米の民謡が流れると神村は、まっすぐ前を向いた状態で舞台奥から斜め前へとステップを踏んでゆく。そんななんでもない動作がとてつもなくおかしく笑わずにはいられないのは、音楽と神村の身体とが等価の存在感をもって舞台に並置されているからだろう。互いが無関係を装ってすましているといった調子で、そんな両者の配置自体がダンスなのである。シンプルな振りが続く。ヘッドバンキングのようになる振りでは、顔が過剰に紅潮する。かっこつける身ぶりが希薄で、そのために、身体はダンサーの所有物というよりも、単にものとして扱われていると感じる。すべてが他との距離をもっている。クールなのだ。だからこそ、観客はその距離のあり方に心奪われ、望まずして爆笑させられてしまうのである。
We dance:http://wedance-offsite.blogspot.com/
神村恵:http://ameblo.jp/kamimuramegumi/

2009/02/01(日)(木村覚)

ヤマガミユキヒロ展 SynchroniCity

会期:2009/02/03~2009/02/15

neutron-kyoto[京都府]

左右二つのスクリーンに異なる都市の風景がスロー再生されている。面白いのは、それぞれの風景が左右対称にトリミングされ、一つの景色に見えるように接続されていること。合体された二つの景色は微妙なバランスを保ち、見た事がないのに既視感がある不思議な状態へと見る者を誘う。ヤマガミは一貫して都市をテーマにした作品を作って来たが、本作が醸し出すゆったりしたグルーヴはこれまでになかった快楽的なものだ。

2009/02/03(火)(小吹隆文)

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