2018年01月15日号
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artscapeレビュー

宮廷装束の世界

2017年06月01日号

会期:2017/04/01~2017/05/27

学習院大学史料館[東京都]

「衣冠束帯」や「十二単」と呼ばれる公家・女房装束は、もともと律令制とともにその原型が大陸からもたらされ、日本独自のものに変化してきた。しかしながら武家の伸長と公家社会の衰微、応仁・文明の乱によりその伝統はいったん途絶してしまう。その後、江戸時代になり社会の安定が回復されると、装束の再興がはかられた。明治に入り宮廷服には洋装が導入されたが、宮中の祭祀や儀礼など大礼における儀服として、装束は継承されている。ただし、このような歴史的背景もあり、一般には「古式ゆかしく」とも形容される装束は決して平安時代のままのものではないことに留意したい。
もとより装束は衣服としての機能的な役割以上に着用者の社会的身分、職掌、年齢などを可視化する装置であり、、近代の装束であっても差異がそのような意味を持っていることに変わりはない。それゆえ、この展覧会を見れば、近代の皇室における華麗な装束の数々を通じて、制度の歴史とその変容、位階による違いなどをうかがい知ることができる……はずだが、じっさいにはとても難しい。なにしろ装束を着付ける際の技術や知識の体系は「衣紋道」と呼ばれる複雑なもので、それも山科流、 倉流というふたつの流派でそれぞれ仕立や着装法に違いがあるというのだから。
出品作品中でとくに興味深く見たのは「大正大礼調度及装束裂等貼交屏風」だ。これは羅および有職織物で重要無形文化財保持者に指定された喜多川平朗が記録・参考用として所蔵されたもの。これらの織物の織り、文様にも複雑な決まりごとがあるのは想像に難くない。他方でこうした複雑な制度の保持と継承には、皇室における日本の伝統文化や国産品の保護という役割もあるそうだ。[新川徳彦]

2017/05/17(水)(SYNK)

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