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2013年01月15日号のレビュー/プレビュー

東京藝術大学大学院美術研究科 博士審査展

会期:2012/12/16~2012/12/25

東京藝術大学大学美術館[東京都]

美術館で博士課程の展示をやっていたのでついでにのぞいてみた。エントランスロビーにあった海谷慶の巨大木彫が印象に残った。渦巻きや竜巻を彫るか? 時間がないので早足で見て回ったが、海谷の作品がいちばんインパクトがあったなあ。

2012/12/19(水)(村田真)

ここから見える景色は最高

会期:2012/12/13~2012/12/20

東京都美術館 ギャラリーA[東京都]

リニューアルオープンの2012年から始まった「都美セレクション」のひとつで、既成の美術団体ではなく「新しい表現に挑むグループ」の公募。都美も団体展の貸し会場というイメージを少しでも変えたいと思っているようだ。今回は多摩美の卒業生4人による絵画、彫刻、インスタレーションの展示だが、ぼくはどっちかというと作品を見にきたというより会場を視察に来たのだ。ギャラリーAは以前はたしか彫刻室と呼ばれていた巨大空間で、壁は表面が凹凸の石なので絵が掛けられず、天井高は10メートルくらいあり、しかもその上半分はオープンになっていて使い勝手が悪そうだ。多摩美の卒業生たちも大きなヤグラを建てたり仮設壁を設けたりして苦労している。ここではどんな作品を見せるかより、いかに展示を考えるかがテーマになりそうだ。

2012/12/19(水)(村田真)

ものづくり 上方“酒”ばなし──先駆・革新の系譜と大阪高工醸造科

会期:2012/10/27~2013/01/19

大阪大学総合学術博物館[大阪府]

上方(関西地方)の酒造の歴史を紹介する展覧会。酒造道具や機械からラベルやポスターまで、さまざまな資料をとおして上方の酒造りの歴史を紐どいている。上方は日本の酒の歴史を牽引してきたといっても過言ではない。その影響力は生産技術に止まらず、社会や文化、教育にまで及んだ。江戸時代には、池田や伊丹で清酒が大量生産され、灘では寒造りが確立されたという。こうした生産技術の発展は市場を拡大させ、さらにその経済的繁栄を背景に文人たちを集めることになった。上方は洋酒生産においても先駆的な役割をはたしてきた。1891(明治24)年に吹田村に巨大ビール工場が登場(現アサヒビール吹田工場)、1924(大正13)年には山崎で国産ウイスキーの製造が開始され、洋酒の製造や普及をもリードしてきたのである。また1897(明治30)年、大阪高等工業学校(大阪大学工学研究科の前身)に国内初の醸造科が設置され、焼酎白麹の発見者・河内源一郎(1883-1948)、秋田吟醸酒の父・花岡正庸(1883-1953)、ウイスキーの伝道師・竹鶴政孝(1894-1979)(ニッカウヰスキー創業)などを輩出した。小規模ながらも充実しており楽しめる展示となっている。[金相美]

2012/12/20(木)(SYNK)

エチュド──中村未来子:編み紐展

会期:2012/12/12~2012/12/23

SEWING TABLE COFFEE(星ヶ丘洋裁学園内)[大阪府]

もっとも大きなサイズでも幅は10数センチ、小さなものに至っては幅5ミリほどしかない編み紐の作品が約50点、テーブルや壁面に展示されていた。会場は昭和初期に建てられた古い洋裁学校の敷地内にあるカフェなのだが、こちらも元々は納屋として使われていた小屋のようで、その佇まいを丸ごと残しているため、室内も独特の雰囲気がある。編み紐は、それぞれの色数も1色か2色と少なく、鮮やかさや派手さなどは全くない。私が訪れた日は雨が降りだす前の曇り空で、自然光が中心の空間は薄暗く、いっそう判り難かったのだが、至近距離で見てはじめてそれらに野の花や星のモチーフが細やかに編み込まれていることに気がついた。自然の景色や夜空の眺めを想起させるリズミカルなパターンはそれぞれ、これはどこの風景なのだろう、いつなのだろうと、季節や作家の感情体験に思いを廻らせるもので、釘付けになってしまう。一見何気ない地味な編み紐ばかりなのだが、慈しいものを表現する作家の美的センスが印象的。


左=会場は古い洋裁学校の敷地内
右=展示風景

2012/12/20(木)(酒井千穂)

プレビュー:橋本大和 写真展 4 1/2

会期:2013/01/08~2013/01/20

NADAR/OSAKA[大阪府]

大阪のとある路地裏にある、築100年の木造四畳半長屋での日々を捉えた写真展。そこの住人たちは、お金はないが連日朝まで騒ぎ、疲れたら眠る。また、さまざまな人が出入りしては消えていく。彼らの生き方は享楽的・刹那的かもしれないが、目いっぱい「いまを生きる人間」たちでもあるのだ。本展では、彼らへの共感に満ちた作品約30点を展覧。ちなみにタイトルの4 1/2は四畳半のことであり、フェリーニの名作映画「8 1/2」へのオマージュでもある。

2012/12/20(木)(小吹隆文)

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