artscapeレビュー
生誕120周年記念 岸田劉生 展
2011年11月15日号
会期:2011/09/17~2011/11/23
大阪市立美術館[大阪府]
混雑が予想されるため、開館時間9時30分のちょっと前に美術館着。チラシを見てびっくり。展覧会名よりもでかく赤い文字で「お待たせしました/麗子です。」のキャッチコピーが踊ってる! ミナミのキャバクラかい。美術館周辺の空気はサイテーだけど、展覧会はサイコーだった。《道路と土手と塀(切通之写生)》と《麗子像》の2点の重文をはじめとする200点を超す作品は、質量ともに満足のいくもの。とりわけ印象派やゴッホやセザンヌを恐るべきスピードで吸収した初期作品には舌を巻くし、「劉生の首狩り」と呼ばれた知人たちの肖像画群は、自画像の連作とともに圧巻というほかない。リンゴや器をモチーフにした一見退屈な静物画も、幼女時代から和服、洋装、セミヌードとさまざまに描かれた麗子像も、これだけ集めると尋常ならざるものを感じる。しかし夭逝の天才画家の宿命なのか、30歳前後から画力が落ち始め、日本画に手を染めるようになる。卑近な「でろり」の美を提唱するのはこれ以降のことだが、作品的には明らかに後退していった。ともあれ、劉生という日本の美術史上希有な才能と、日本で油絵を描き続けることの困難さをあらためて知ることができた。
2011/10/22(土)(村田真)