artscapeレビュー
発光する港~香港写真の現在2011
2011年11月15日号
会期:2011/10/17~2011/11/17
ガーディアン・ガーデン[東京都]
ガーディアン・ガーデンで2~3年に一度のペースで開催されている「アジアンフォトグラフィー」のシリーズも7回目を数える。これまで、韓国、台湾、中国などの若手写真家たちを紹介してきたのだが、今回は台湾のキュレーター、呉嘉寳(ウー・ジャバオ)の構成で、香港の9人の写真家たちの作品が展示された。
張偉樂(チョン・ワイロック)、陳偉江(チャン・ワイクウォン)、何兆南(ホ・シュウナム)、余偉建(ヴィンセント・ユー)、呉世傑(ング・サイキット)、謝明荘(チェ・ミンチョン)、蘇慶強(ソ・ヒンキゥング)、何柏基(ホ・パックケイ)、頼朗騫(ライ・ロンヒン)の9人は、1957年生まれの呉世傑から1986年生まれの張偉樂まで、世代的にはかなり幅が広い。だがそこには、ポラロイド写真(頼朗騫)、パノラマ写真(呉世傑、余偉建)、フェイスブックとカメラ付き携帯電話(張偉樂)など、さまざまなメディアを介して画像を加工しつつ、多彩な映像世界を構築していく香港の写真家たちのスタイルがよくあらわれている。画像処理の洗練度は中国本土や台湾の写真家たちより高いが、強度という点ではやや物足りない所もある。だが、陳偉江の体を張った果敢なスナップショットの集積など、これまでとはやや異質な表現も芽生えはじめているようだ。
このような展覧会を見ると、日本も含めた「東アジアの写真表現」のあり方について、あらためてきちんと考えるべきではないかと思ってしまう。単発の展示ではなく、そろそろ東アジア各国、各地域の写真を共通性と異質性の観点から裁断する、より大きなスケールの展覧会やシンポジウムを企画していかなければならないのではないだろうか。
2011/10/18(火)(飯沢耕太郎)