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布の絵画BORO──美しいぼろ布

2015年02月01日号

会期:2014/10/03

アミューズミュージアム[東京都]

「ぼろ」とよばれる、着ふるされ、擦りきれ、縫いあわされた布の展覧会。青森の民俗・民具研究家、田中忠三郎がおよそ40年間にわたって収集したコレクションからの出品である。「ぼろ」とは、青森の山村、漁村、農村で江戸時代から何世代にもわたって使い継がれてきた布のこと。収集をはじめたのは昭和40年代というから、そこから垣間見えるのはほんの数十年前まであった日本人の衣生活である。
寒冷の地青森では、布はひときわ貴重な生活物資であった。気候上、布になるような繊維は麻しか栽培できない。絹や羊毛はもとより、木綿ですら庶民にとっては容易にえがたいものであった。冬の夜、家族が身を寄せあって裸で包まって寝る夜具「ドンジャ」は、縞柄や型染めのさまざまな布が重ねて継ぎ当てられて、中綿代わりの麻くずとあわせると14キロもの重さになる。座布団やクッション、敷き布団の代わりに用いられた「ボドゴ」。継ぎはぎだらけのその表面には擦りきれて原型を失った布が繊維状になってへばりついている。メリヤスや木綿、毛織物や絹などありとあらゆる布きれが寄せ合わされた肌着は、着る者の体に馴染んでこなれ、まるで一枚の表皮のような生々しい存在感を漂わせている。向こう側が透けて見えるほどに、薄く、柔らかく、くたくたになっても、布はまだ生きていて、丁寧に縫いあわされることで幾度となく再生されるのである。
アミューズミュージアムは田中忠三郎コレクションを主要な収蔵品に、2009年、東北からの玄関口だった上野、浅草寺の二天門前に開館した。コレクションのなかには重要無形文化財や有形民俗文化財もあるにもかかわらず、展示ケースに入れるのではなく、手に取るほどに間近に見ることができるよう工夫された展示も魅力である。[平光睦子]

2015/01/11(日)(SYNK)

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