2022年04月15日号
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artscapeレビュー

世界のブックデザイン2013-14 feat.スイスのブックデザイン

2015年02月01日号

会期:2014/11/29~2015/02/22

印刷博物館P&Pギャラリー[東京都]

ドイツで開催されている「世界で最も美しい本コンクール2014」に入選した図書と、そのほか8カ国で行なわれているブックデザインコンクールの入賞作品を紹介する展覧会。今年度はこれらに加えて日本とスイスの国交樹立150年を記念して第二次世界大戦後のスイスのブックデザインを紹介するコーナーが設けられており、合計約160点の本が並ぶ。例年通り、コンクール入賞作品は自由に手にとって見ることができる。スイス・ブックデザインのコーナーは基本的にケースでの展示だが、新たに入手できたものは手にとれるコーナーが設けられている。訪れたときには会期が始まってすでに2カ月が経っており、多くの人びとの手に触れて傷んだ本もある。デザインや紙の手触りを見るだけではなく、そうした造本の耐久性を見ることができるのもこの展覧会の特徴だ。
 本展を毎年企画している寺本美奈子・印刷博物館学芸員によれば、入賞作品の大きな傾向として、テキストを読むツールとしてのコンピュータや電子書籍の台頭に対して、紙のメディアにできることが見直されているという。物理的なサイズや重さ、表紙や本文の紙の手触り、ページをめくるときに求められる所作(箱や折り込み、特殊な綴じなど)、タイポグラフィの工夫はもちろんのこと、活版印刷や特殊インキを用いた文字や図版、さらにはインキの匂いまで、五感に訴える本づくりが見られる。
 他方で、内容面では電子書籍に見られる機能性、検索性を紙の本に取り入れる工夫が、とくに科学書や作品集など、編集の力が及びやすいジャンルの書籍に見られるという。例えば「世界で最も美しい本コンクール2014」で金賞を受賞したドイツの建築事務所の作品集『Buchner Bründler Bauten』は、目次に相当する部分が建築の評論テキストになっており、そこから作品図版のページにリンクする。論文テキスト中に図版番号を指示する方法はよく見られるが、それを目次(あるいは内容索引)に仕立てているといえば分かるだろうか。テキストは複数あり「目次」は29ページにおよぶ。図版ページからはテキストが排除されている。構造的には、ウェブサイトでひとつの画像を複数の箇所にリンクしたりポップアップ表示させたりする手法に類似する。
 本年度の展示で紹介されているその他のコンクールは、日本、ドイツ、スイス、オランダ、オーストリア、中国、イランの8カ国。限られたスペースで多様な国のブックデザインを紹介するために、毎年少しずつ国を入れ替えているという。昨年との違いは、カナダとベルギーが外れ、「世界で最も美しい本コンクール2014」で『Hello Stone』というタイトルの書籍が栄誉賞を受賞したイランが初めて加わったこと。歴史資料としての本を博物館などで目にすることはあっても、現代のペルシャ語書籍がどのようなものか知っている人は少ないと思う。ぜひ会場で手にとって見て欲しい。
 1948年から2014年まで、43点のスイス・ブックデザインを紹介するコーナーは、ブックデザイナー・タイポグラフィ研究家のヨースト・ホフリ氏およびローランド・シュティーガー氏によるセレクション。一般に日本で紹介されるスイスのブックデザインは、サンセリフ書体を使い、グリッドシステムでレイアウトされたものになりがちであるが(東京オペラシティアートギャラリーの「スイスデザイン展」で紹介されているものは、まさにそれである)、本展ではスイス人の研究者がデザイン史的に重要な書籍をセレクトしたことで、それらとはまた違った多様なデザインが紹介されている。スイスには、ローマン体を使った優れたデザインもちゃんと存在するのだ。[新川徳彦]


展示風景

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2014/01/28(水)(SYNK)

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