2020年09月15日号
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artscapeレビュー

篠田千明『The 5×5 Legged Stool──四つの機劇より』

2015年03月01日号

会期:2015/02/13~2015/02/15

高架下スタジオSite-D 集会場[神奈川県]

昨年7月に上演された『機劇』Aプロの一部「ダンススコアからおこしてみる[譜面]」をリニューアルしたのが本作。もっとも大きな変更点は、映像にあった。この作品の趣向は、ダンサー福留麻里がアンナ・ハルプリンの「5 Legged Stool」という作品をひとりで演じるというもの。ひとりで五つのパートをどう演じるかというと、福留がひとつ目のパートを演じ終え、次に二つ目を演じる際に、ひとつ目の演技の内容が会場に設置してあるモニターに映されるという形式をとる。そうやって、ひとつのパートの演技が終わるたびにモニターでは映像が重ねられ、映像のなかでパートがひとつずつ増えてゆくというわけだ。舞台上の演技が映像によって編集され統合されていくという点に、篠田千明の独創的なアイディアは凝縮されているわけだが、初演の際には映像を重ねた結果福留の姿が映像内で薄くなってしまうという難点があった。ところが、今回は映像を重ねる代わりに、福留が映っている部分を周りから切り取るようにすることで、薄くなる傾向が改善されていた。福留が複数映ると画面の枠のなかが複数に切り分けられる。その映像自体新鮮で面白いのだけれど、それがたんに映像としてあるのではなく、舞台のなかにモニターとともに設置され、舞台表現の一部となっているところに、本作の最大の驚きがある。じつは、映像のなかの福留は、別撮りだ。別の場所で撮ったものであり、目の前の演技をその場で撮影し、即座に編集し、上映したというものではない。とはいえ、それでもその映像は、目の前で演技を行なう福留と響きあう。このことはなによりひとつの「福留麻里の身体」だからこそ与えられる共鳴だろう。時間の経過とともに「福留麻里の身体」は増殖する。複数のパートは、普通は異なる複数の人間によって演じられるわけだが、ここではひとつの「福留麻里の身体」がそれを実現させる。そのことは奇妙で、異常でさえあるのだけれど、しかしひとつの身体によってであるがゆえの統一感もあって、映像が生み出す演劇なるものに、今後起こりうる「未来の演劇」としての手応えを感じた。

2015/02/15(日)(木村覚)

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