2020年09月15日号
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artscapeレビュー

デミタス コスモス──宝石のきらめき★カップ&ソーサー展

2015年03月01日号

会期:2015/02/07~2015/04/05

三井記念美術館[東京都]

鈴木康裕・登美子夫妻が40年にわたって蒐集してきた500セットを超えるデミタスのコレクションから、約300セットをセレクトして展観する特別展。ヨーロッパ陶磁の蒐集家は日本にも数多いが、デミタスだけを集めている方のなかで鈴木夫妻は第一人者であるという。「デミタス」に明確な定義はなく、主として食後に飲む濃いコーヒーのための小さな器がその名称で呼ばれているが、鈴木夫妻はさらに独自のルール──カップの高さが7センチ以下、ソーサーの直径が12.5センチ以下、ハンドル付のカップであること、受け皿とセットであること、完品であること──を設けて蒐集しているという。時代は18世紀から20世紀初頭。ヨーロッパの窯──なかでもロイヤル・ウースター(英)がいちばん多い──が蒐集の中心であるが、明治期日本の輸出品も含まれている。自宅一室の壁面に展示ケースをしつらえて、ふだんはそこに300点のデミタスが飾られているそうだ。このすばらしい蒐集品が、昨年の岐阜県現代陶芸美術館での展覧会から1年にわたって全国を巡回していることを考えると、鈴木夫妻が自宅で寂しい思いをしているのではないかと心配にもなる。
 デミタスの装飾には器のフォルムに関わる部分と、色や図柄など絵付に関わる部分とがあり、しばしばその双方が相まってたんなる飲み物のための器とは思えない繊細な美しさをもたらしている。ソーサーを含めても手のひらで包み込めるそのサイズもまたかわいらしさを増しているように思われる。「宝石のきらめき」というサブタイトルはけっして大げさではない。出品作品には器がジャガイモ、ソーサーがその葉を模したかたちをした一風変わった作品などもあり、一つひとつを見ていて飽きることがない。ソーサーに特徴がある作品ではソーサーをカップの横に置くなど、展示も工夫されている。図録には裏印の写真も掲載されており、蒐集家への配慮も万全だ。シノワズリやジャポニズムなど器に文化の東西交流の跡を見ても興味深いし、名窯の歴史を辿りながら見るのもよい。もちろん、ただその装飾の美しさを愛でるだけでも十分に楽しい展覧会である。[新川徳彦]

2014/02/06(金)(SYNK)

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