artscapeレビュー

WITHOUT THOUGHT Vol.14 スマホ

2015年03月01日号

会期:2015/01/09~2015/02/01

ヨコハマ創造都市センター[神奈川県]

「WITHOUT THOUGHT」とは「思わず……」の意。人々の無意識の行動をテーマとして、プロダクト・デザイナー深澤直人がディレクションし、さまざまな企業で働く現役のデザイナーたちが参加するワークショップの作品展。14回目のテーマは「スマホ」。薄い四角い板状の物体で、多くの人びとがほぼ同一の形状のものを日常的に身につけ、持ち運ぶプロダクト。そうしたスマートフォン(実際にイメージされているのはiPhoneと言ってよい)のかたち、使用シーンから発想されたさまざまなオブジェやアプリ、実際的な周辺機器からユーモアのある提案まで、今回もとても楽しく見た。例えばトイレの個室で用を足しているときにスマホをいじる人は多い。紙を使ったり水を流すときに手の届くところにちょっとスマホを置く場所があればということは誰でも思うこと。滑り止めが付いたトイレットペーパーホルダのカバーやスマホサイズのトレーの提案はじつに気の利いた説明不要のデザインである。ひっつき虫と呼ばれる植物の種子を模したパーツが付いているイヤホンのコードは、セーターのどんな場所にでもコードをくっつけて保持できる。ワイングラスのような脚が付いたスマートフォンカバーは、持ちやすさという機能を持たせると同時に画面のガラスの割れやすさを皮肉っているようで面白い。黒いiPhone 5とそっくり同じかたちをした薄い羊羹は、思わず手に取ってしまったあとにどうしようか。アプリの提案では作業途中で放置しておくと画面がだんだんぼけながらスリープ状態になる「寝ぼけスマホ」や、バイブレーション機能を利用した紙相撲がナンセンスでよかった。[新川徳彦]

2015/02/01(日)(SYNK)

2015年03月01日号の
artscapeレビュー