artscapeレビュー
『ニーゼと光のアトリエ』
2016年12月15日号
会期:2016/12/17
[全国]
ブラジルの精神病院でまだ電気ショック療法やロボトミー手術が行なわれていた1940年代、女性医師ニーゼはさまざまな障害にぶつかりながら、患者に絵を描かせたりペットを飼育させることで彼らの心を少しずつ解放していくという、実話に基づいた映画。冒頭でニーゼが病院の鉄の扉をたたくが、なかなか応答がない。これが映画の内容を象徴していることにあとで気づく。彼女の前に鉄の扉として立ちふさがるのは白人の男性医師たち。対して患者は有色人種が多い。ここでは支配者と被抑圧者の構図が、医師/患者、男性/女性、白人/有色人種という2項対立でわかりやすく図式化されている。ここに陰気/陽気という2項対立を加えてもいいかもしれない。そもそもブラジル人は国民的に陽気なので、妨害もなんとか乗り越えられるし、ニーゼもクビにならずにやっていけるし、街の画廊で開いた患者たちの展覧会も成功裏に終わるってわけだ。陰気な日本ではこうはいくまい。最後に、年老いたニーゼへのインタビュー映像が出てくるが、本当に陽気なおばあちゃんだった。
2016/11/08(火)(村田真)