artscapeレビュー
リフレクション写真展2016
2016年12月15日号
会期:2016/11/07~2016/11/19
表参道画廊+MUSEE F[東京都]
湊雅博のディレクションで、毎年秋に開催されているのが「リフレクション写真展」。「風景写真」の新たな胎動をフォローする企画だが、今回は寺崎珠真、丸山慶子、若山忠毅が出品していた。神奈川県海老名市在住の寺崎は、自宅の近くのアップダウンがある郊外の風景を押さえ、丸山は金属加工業者の多い新潟県燕市の錆に覆われた街並みを撮影している。若山は東北地方から北陸にかけての沿岸地域をバイクで移動しながら、目についた風景を切り取っていく。
3人ともしっかりと地に足をつけた撮り方で、シリーズとしてのまとまりもいい。風景の細部を見落とすことなく、的確に画面におさめていく手際も洗練されている。だが、全体を通してみると何を言いたいのか」がストレートに伝わってこないもどかしさが残る。文字情報がほとんどなく、各作品の背景があまり明確に提示されていないのもその一因だろう。「リフレクション写真展」の出品作をきちんと受け止めるには、かなり高度な写真読解力が必要になるのだが、そのようなリテラシーを備えた観客はそれほど多くはない。もう少し丁寧な解説をつけた展示の仕方も考えてもよいだろう。例えば若山の写真には、海上自衛隊の軍艦、原子力発電所、日の丸の旗などが写っており、明らかにこの時代の社会構造の指標となる眺めを取り込んでいこうとする視点が見られる。そのあたりを、もう少し積極的に文字情報で伝えることができれば、観客の理解も深まるのではないだろうか。
やや地味な企画だが、着実に日本の「風景写真」の裾野を広げつつある。どこかで区切りをつけて、もう少し大きな規模の展示も見てみたい。
2016/11/16(飯沢耕太郎)