artscapeレビュー
倉敷フォトミュラルf
2016年12月15日号
会期:2016/10/21~2016/11/16
倉敷駅前アーケード、倉敷アイビースクエア内アイビー学館[岡山県]
2004年からスタートした「倉敷フォトミュラル」。商店街のアーケードのバナーに、大きく引き伸ばした布プリントの写真を飾る公募企画だが、2014年から「倉敷フォトミュラルf」と名前を変えて、美観地区の倉敷アイビースクエア内アイビー学館で開催される「個展部門展示」を併催するようになった。ほかに高校生が対象の写真ワークショップ「PHOTO STADIUM」や、親子で参加する「親子バトルだ!ワクワク写真展」の参加者の作品なども展示されており、倉敷の秋の観光シーズンの真っ只中ということもあって、多くの観客が訪れていた。実質的な運営を担当している岡山県立大学デザイン学部のSAKURA Projectの学生さんたちの献身的な努力もあり、参加型の写真イベントとしてすっかり定着したといえるだろう。
「旬」をテーマに公募された57点の商店街の展示もなかなか充実した内容だが、アイビー学館での個展部門のレベルが相当に上がってきている。今年の出品者は、伊藤雅浩、高木直之、坂本しの、新宅巧治郎、葛西亜理沙、関谷のびこ、菅泉亜沙子、早苗久美子、平井和穂(WAPO)、近藤優斗の10名。キャリアも作風もバラバラだが、若い写真家たちが次のステップに進んでいくきっかけになるといいと思う。モノクロームのスナップショットの新たな方向性を模索している坂本しの「speculum/反射鏡」や菅泉亜沙子「かつて、まなざしの先に」、日常の場面のズレや揺らぎを「モヤチッチ」という絶妙なネーミングで捉えた早苗久美子の作品など、今後の展開が大いに期待できそうだ。「PHOTO STADIUM」の参加作品からグランプリに選出された大原理奈「はばたけ!」も新鮮な切り口の力作だった。
今後の課題は、やはりほかの地域イベントとの連携を図ることではないだろうか。瀬戸内国際芸術祭などとのかかわりも深めていけるといいと思う。
2016/11/06(飯沢耕太郎)