artscapeレビュー
宇田川直寛「Assembly」
2017年02月15日号
会期:2017/01/05~2017/01/23
QUIET NOISE arts and break[東京都]
1981年、神奈川県生まれの宇田川直寛は、このところ注目すべき作品を発表している写真作家である。2016年から横田大輔、北川浩司とともにSpewというユニットを組み、ZINEを刊行したり、その場でプリントを出力して展示・販売したりする活動を積極的に展開してきた。
今回はユニットとしてではなく彼の単独の個展で、東京・池ノ上のカフェ・ギャラリーに、木材、ガラス、ボール紙などのインスタレーションを組み上げ、その間にプリントを張り巡らせていた。宇田川の写真のほとんどは、彼自身が即興的につくり上げたモノの配置を即物的に記録したものである。とりたててなにかの意図を持ってつくっているわけではなく、身近にある道具、パッケージ、電線、木片、紙類などを、テープで貼り付けたり、重ね合わせたりしてオブジェ化する。その組み合わせ方に、独特の「詩学」を感じることができる。でき上がったオブジェは、写真に撮影すれば廃棄してしまうようだ。つまり、彼にとっては、モノどうしを直感的に組み合わせていくサンプリングのプロセスそのものに意味があるのであり、写真はあくまでもそれを記録する手段にすぎない。とはいえ、モノの質感や色味の再現に細やかに配慮した写真そのものにも、不思議な魅力がある。
とてもユニークな作品世界が生み出されつつあるのだが、展示はまだ試行錯誤の段階にある。写真とインスタレーションとの関係を、もう少し注意深く、緊密に練り上げていく必要がありそうだ。それよりも、会場で販売していた少部数限定のZINEのほうが面白かった。『7Days Aru/Iru koto』(2016)、『arm/ cave』(同)、そして今回の展示に合わせて刊行された『assembly』。巧みな編集・レイアウトで紙上に再構築された作品世界が、ヴィヴィッドに目に飛び込んでくる。
2017/01/07(土)(飯沢耕太郎)