artscapeレビュー
フィールドオフィス・アーキテクツ+ 聲遠の作品群(宜蘭誠品書店、 王光小道ほか)
2017年02月15日号
宜蘭県[台湾、宜蘭県]
街の中心である三日月ショッピングプラザの宜蘭誠品書店も、彼らの手がけたインテリアだが、樹の模倣、緑色、床の傾斜によって、屋外プロジェクトとの視角的な共通性を維持する。向かいの宜蘭美術館は台湾銀行のリノベーションだ。旧建築との対話によって、複雑な空間/デザインが生まれている。そして、新しく設けられた屋上からは街を望む。
宜蘭酒造所再生は、やはり緑の共通色を用いながら、古い配管などを再利用しつつ、広大な工場や倉庫を地域に開放されたミュージアムや商業施設の場に変えている。続いて、楊士芳記念林園は、初期のプロジェクトだけに、多様な素材と手法による密度の高いデザインだった。ここでも建築とランドスケープが一体になっている。
王光小道は、普段なら歩かない、家のあいだを通りぬけるような公道をつくったり、電力会社の壁を切り取り、その庭を提供し、プライベートとパブリックの境界を揺るがす。その先にあるのが、宜蘭社会福祉センターだ。大晦日とはいえ、街は十分に温かく、風通しのいい陰だまり、ベンチの提供などがありがたい。社会福祉センターからは西堤屋根付橋のブリッジを経て、宜蘭河堤グリーンベルト、そして、対岸に渡る津梅橋遊歩道へとつなぐ。特に橋の脇に添えられた小さな空中歩廊は揺れ動き、水上を歩くような刺激的な空間体験である。いずれもセンスがキレキレというよりも、随所に楽しさやユーモアが感じられるデザインだ。
写真:左=上から、《宜蘭誠品書店》、《宜蘭美術館》、《宜蘭酒造所》、《楊士芳記念林園》 右=上から、 王光小道、《宜蘭社会福祉センター》、《西堤屋根付橋》、宜蘭河堤グリーンベルト、津梅橋の脇に添えられた空中歩廊
2016/12/31(土)(五十嵐太郎)