artscapeレビュー

プレビュー:猿とモルターレ アーカイブ・プロジェクトin大阪

2017年09月15日号

会期:2017/10/28~2017/10/29

FLAG STUDIO[大阪府]

『猿とモルターレ』(演出・振付:砂連尾理)は、「身体を通じて震災の記憶に触れ、継承するプロジェクト」として、公演場所ごとに市民とのワークショップを通じて制作されるパフォーマンス作品。2013年の北九州、2015年の仙台公演を経て、2017年3月に大阪で上演された(大阪公演の詳細は、下記の関連レビューをご覧いただきたい。メタファーを随所に散りばめつつ、声と身体を駆使した圧倒的なパフォーマンスと反復の密度をたたえた、優れた舞台だった)。この大阪公演では、震災後の東北で記録と継承の活動に取り組む映画監督の酒井耕とアーティスト・ユニットの小森はるか+瀬尾夏美が参加し、朗読テクストの提供や記録撮影を手がけた。
今回の「アーカイブ・プロジェクトin大阪」は2日間に渡って行なわれる。1日目は、映像作家の小森による上演の記録上映会と、記録映像と「継承」のあり方について考える「てつがくカフェ」が開催される。2日目には、瀬尾のテクストの朗読ワークショップと、酒井による映像ワークショップを開催。それぞれのワークショップでは砂連尾も講師として加わり、「身体を使ってテクストを読む」「声や身体による出来事の継承」や、「カメラに撮られる身体の変容」「記録メディアによる出来事の編成の危うさとその可能性」について考えるという。
本プロジェクトは、「震災の記憶の継承」という問題に加えて、「舞台芸術の一回性や身体性をどう記録するか」というパフォーミングアーツにおける「記録」やアーカイブの問題についても考える好機となるだろう。また、単なる記録映像ではなく、映像作家や映画監督すなわち表現者としての視点や問題意識をどう取り入れるか、という点にも注目したい。なお本プロジェクトは、来年3月10日~11日にせんだいメディアテークにおいても開催が予定されている。

撮影:松見拓也

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2017/08/31(木)(高嶋慈)

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