artscapeレビュー
赤鹿麻耶「大きくて軽い、小さくて重い」
2017年09月15日号
会期:2017/07/18~2017/08/26
Kanzan Gallery[東京都]
展覧会のキュレーターやプロデューサーの役割については懐疑的な意見もあるが、赤鹿麻耶の今回の展示などを見ると、やはり大きな意味を持つのではないかと感じる。本展は、菊田樹子のキュレーションによってKanzan Galleryで開催されている連続展「写真/空間」の第3回目にあたる。それを見ると、いつもの赤鹿の、空き地や銭湯などで展開される、ごった煮状態のインスタレーションとはかなり違った印象を受けたからだ。
といっても、ポートレート、スナップ写真、オブジェを使った演出写真などが見境なく混じり合う構造に違いはない。だが、今回のようなホワイト・キューブでの展示空間を構成するにあたって、菊田はあえて「展示方法のディテール(大きさ、並べ方、印画紙の平面やたわみ、浮かぶことや隔てられることに起因する見え方の違い)に変化をつけた」という。そのことによって、野放図に伸び広がって、収拾がつかなくなりがちな赤鹿の作品が、すっきりと目に収まって見えるようになった。あまりコントロールを効かせすぎると、パワーが落ちてまとまりすぎになるが、そのあたりのバランス感覚が、とてもうまくいっていた。
「他人の見た夢」の再現、視覚化というこのシリーズの狙いも、しっかりと伝わってきた。これもやり方次第では混乱しがちなテーマだが、今回は丁寧につくり込まれていて説得力がある。まさに「大きくて軽い、小さくて重い」という、矛盾や飛躍を含んだ「夢」の構造に、全力でにじり寄ろうとしていることが伝わってきた。ただ、それぞれの写真のキャプションやテキストがすべて省かれているのが気になる。夢を言葉で捕獲・記述して、写真と対照させていくことも考えられそうだ。
2017/07/23(日)(飯沢耕太郎)