artscapeレビュー
森山大道「Pretty Woman」
2017年09月15日号
会期:2017/06/13~2017/09/17
このところの荒木経惟の大爆発も驚きだが、森山大道も負けてはいない。いまや「後期高齢者」になった彼らのエネルギーの高揚ぶりを見ていると、単なる世代論では割り切れない、特別の力が働いているようにも思えてくる。
森山は2000年代以降、写真集だけでなく展示にも力を注ぐようになってきているが、今回のAkio Nagasawa Galleryでのインスタレーションは、予想以上に大変なことになっていた。壁だけでなく、柱にもコラージュ状にプリントが貼り巡らされ、その上にフレーム入りの作品が掛けられている。カラーとモノクロームが混じり合った作品は、すべて「この一年」に撮影されたという新作であり、そこから「Pretty Woman」というテーマに沿って選択されたものだ。こうしてみると、森山にとってのWomanのイメージの許容範囲が相当に広いことに気がつく。文字通りの「Pretty Woman」の写真もないわけではないが、そこからかけ離れて見えるものも多い。さまざまな物体、ポスターや看板などの二次的な画像、さらには男性すら、強引にWomanの範疇に組み入れられている。それはそのまま、森山が現実世界に対して向ける眼差しの幅の広さを示しているのだが、それでもどの写真も、森山の世界観をそのまま体現しているように見えてくる。信じられないような力業を軽々とやってのけていることに逆に凄みを感じる。
展覧会に合わせて、Akio Nagasawa Publishingから同名の写真集が刊行された。ど派手なデザインの表紙やレイアウトが、写真集の内容にうまく対応している(造本は中島浩)。
2017/08/11(金)(飯沢耕太郎)