artscapeレビュー
七菜乃「My Aesthetic Feeling」
2017年09月15日号
会期:2017/08/11~2017/08/20
神保町画廊[東京都]
主にヌードやコスプレで撮影される「特殊モデル」として活動していた七菜乃(なななの)は、2015年ごろから撮る側に回るようになった。神保町画廊で最初に開催した個展「裸体というドレス」(2015)では、「セルフヌード」作品を展示したのだが、次の「私の女神たち」(2016)では、ほかの女性モデルたちにもカメラを向けるようになった。今回の神保町画廊での個展「My Aesthetic Feeling」でも、前回に続いて「集団ヌード」の撮影にチャレンジしている。
今回は「裸は単に裸で、もともと裸体に特別な意味はない。ただ私の美意識がそこにあるだけ」ということを表現したかったというが、たしかに、都内のスタジオで11人のモデルたちをヌードで撮影した写真には、気負いのない、自然体の撮影の仕方が貫かれている。窓からの自然光で浮かび上がる室内の空気感はまったりとしていて、ことさらにポーズをつけない、あるがままの「裸」のあり方がとてもうまく定着されていた。デジタルのほか、フィルムやチェキでも撮影しているが、その淡い色味や粒子の感触もしっかりと使いこなしている。そう考えると、モデルとして「撮られる」側の心理や身体の置きどころを心得ているということは、「撮る」立場になった時には、かなり有利に働くのではないだろうか。いまの方向を突き詰めていくことで、日本ではあまり例の見ない、複数の裸体が互いに反響していくような「集団ヌード」の可能性が、もっといろいろな形で拓けていくのではないかと思う。次の展開も楽しみだし、このシリーズはぜひ写真集にまとめてほしい。
2017/08/18(金)(飯沢耕太郎)