artscapeレビュー

札幌国際芸術際2017 その3

2017年09月15日号

[北海道]

札幌国際芸術際の芸術の森エリアへ。美術館は、入り口に刀根康尚の視覚詩インスタレーションや中庭に鈴木昭男の聴く場所群はあるものの、ほぼクリスチャン・マークレーの個展だった。楽器としてのレコード、リサイクル、道ばたのゴミによるアニメーション、そして大友良英らとの競演の記録などをうまく見せるなあと感心する。工芸館は、ボアダムスの∈Y∋による闇の中の光の海のインスタレーションだった。1時間見せるたびに、メンテナンスで1時間クローズする不思議な形式は、実物を見ると、ああこういうことかと納得した。これは巧拙で判断するタイプの作品ではない。制作への執念のエモーションに包まれるような空間の体験だった。有島武郎旧邸では、鈴木昭男による点音のアーカイブを展示する。音のアーティストでかためた芸術の森エリアは、ガラクタ系アートと同様、芸術監督の大友色がよく出ている。なお、この建物は3度目の訪問だが、洋風の外観と内部の和風のギャップの激しいのが興味深い。屋根や窓の収まりにそのしわ寄せがきているのだが、当初の離れた部屋に声を伝える仕組みも室内に残っている。また札幌市立大学の清家清が設計した建物では、空中ブリッジを使い、毛利悠子がサウンド・インスタレーションを展開していた。前回のSIAFのとき、彼女は清華亭の和室で細やかな作品だったが、今回は眺望がよい、長い空間をいかしてダイナミックなスケールで介入を行なう。ただ、ルートが一方通行を指定されているため、まず最初に坂道を登るのがちょっとしんどい。

写真:上から、芸術の森エリア、有島武郎旧邸、鈴木昭男、毛利悠子

2017/08/16(水)(五十嵐太郎)

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