artscapeレビュー
札幌国際芸術際2017 その4
2017年09月15日号
[北海道]
都心に戻り、再びまちなか展示をめぐる。CAI02では、クワクボらの札幌ブルーラインとさわひらきの過去作の展示を行なう。前者は、これまでのような日用品の集合ではなく、ベタに札幌のランドマークのミニチュアを置き、やたらノスタルジックな音楽を流している。大衆受けはすると思うけど、これではさすがに作品としては後退しているのではないか。またガラクタに注目する芸術祭の趣旨とも違う。金市館ビルの梅田哲也の展示は、上部が空っぽになったデパートのワンフロアをまるごと使い、あいちトリエンナーレの岡崎や豊橋の会場に近い雰囲気だ。おそらくカプセル状の円窓に触発され、球をモチーフにしつつ、ガラクタがメカニカルに連動するインスタレーションである。音響の発生とガラクタの再利用という意味において、今回の札幌芸術際らしさが最もよく出ていると思う。北海道教育大の文化複合施設HUGにて、さわひらきが北海道で制作した新作の映像とインスタレーションを見る。この会場も探すのにえらく苦労した。公式ガイドの粗い地図と鑑賞ガイドと住所一覧をつき合わせても、札幌の一街区は大きいので、結局、近くに来るとしばらく迷う。これは正確に場所をプロットした適度な縮尺の地図がひとつちゃんと用意してさえあれば、解決することなのに。駅前で「サッポロ発のグラフィックデザイン~栗谷川健一から初音ミクまで」展を見る。デザインから切り取る札幌の歴史であり、五陵星や七陵星などのシンボル、オリンピックなど内容は興味深い。札幌の建築もここで少し紹介している。ただ、会場を「プラニスホール」と地図で書かれても、たどりつくのに苦労する。なぜなら、この名称は11階の部分のみを示すものであって、建物全体の名称ではないからだ。地元の人にとっては常識なのかもしれないが、少なくともタクシーの運転手はわからなかった。
写真:上から、札幌ブルーライン、梅田哲也、北海道教育大の文化複合施設HUG
2017/08/16(水)(五十嵐太郎)