artscapeレビュー

淡江大学建築学科卒計展

2019年07月15日号

松山文化創園地区[台湾、台北市]

ほぼ3ヶ月連続で台北を訪れることになったが、今回はアドバイザーとして関わった忠泰美術館の「人間自然─平田晃久個展」が目的ではなく、淡江大学の建築学科の卒業設計展に関連したレクチャーで招待された。会場は日本統治時代に建てられた旧煙草工場をリノベーションし、さまざまなデザイン関係の展示やイベントを行なう「松山文化創園区」であり、伊東豊雄によるホテルも建つ。ここでは《台湾デザインセンター》が拠点を置き、プロダクト、ファッション、グラフィックなどの企画展を行なう《台湾デザインミュージアム》も入っている。なお、「松山文化創園地区」の背後には、1930年代の巨大な鉄道施設の再生計画の敷地が隣接し、将来も変化が続きそうなエリアだ。



伊東豊雄が手がけた《エスリテ ホテル》


「松山文化創園区」内にある《台湾デザインミュージアム》

淡江大学で教鞭をとる平原英樹、柯純融、鄭晃二先生と会食し、たずねたところ、毎年、学生の自主企画で卒計展や講演会を行なっているらしい。通常は建築家を呼ぶみたいだが、筆者の著作がすでに台湾で何冊か翻訳されていることで、今回声がかかったようだ。もっとも、2051年までの未来のどこかに自らのプロジェクトを位置づける全体テーマを設けたり、各作品をトランプの図柄にしたグッズも制作するなど、さまざまな仕掛けを施し、ただ単に模型や図面を並べるだけの展覧会にはなっていない。



「2051年までの未来のどこかに自らのプロジェクトを位置づける」という全体テーマのダイアグラム

こぢんまりとした提案になりがちな日本の学生に比べると、未来志向のデザインが多く、こなれた空間の操作をみると、設計のレヴェルもかなり高い。今後の活躍が期待される。また会場が広いこともあり、十分なスペースをとりながら、1/1のモックアップやデジタル・ファブリケーションのインスタレーションを展示し、しかもゴーグルを使って仮想空間を体験する作品まで楽しむことができた。


1/1のモックアップの展示

さて、講演では「窓から建築を考える──歴史、美術、漫画、そして映画」と題し、10年間におよぶ東北大学五十嵐太郎研究室による窓学リサーチ・プロジェクトの研究成果を語った。その後、日本の卒計との違い、窓に関連するプロジェクト、すぐれた造形のデザインなどに触れながら、学生のいくつかの作品を講評した。



筆者が講演した会場の様子


淡江大学建築学科の卒業設計展より「境界的反面」


淡江大学建築学科の卒業設計展より、豚の屠殺場を設計した作品


淡江大学建築学科の卒業設計展より「RED WINDOWS」


「インビジブル・ピーコック」展の様子

2019/06/15(土)(五十嵐太郎)

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