2020年10月15日号
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artscapeレビュー

塩田千春展:魂がふるえる

2019年07月15日号

会期:2019/06/20~2019/10/27

森美術館[東京都]

まだ40代のアーティスト、塩田千春の代表的な作品を網羅した大規模な個展。最初の大きなギャラリーに入ると、2015年のヴェネツィア・ビエンナーレで発表したのと同じく、何艘かの舟(ただし骨組みのみ)から無数の赤い糸が宙に広がるインスタレーション《不確かな旅》に圧倒される。1本の赤い糸といえば男女間のつながりを暗示するが、これだけ大量にあると、舟から立ち上る炎か血しぶきにも感じられる。

会場を進むと、焼けたピアノと客席から黒い糸が立ち上る《静けさの中で》、古い木枠の窓を重ねた《内と外》、たくさんの古いトランクを赤い糸で吊るした《集積─目的地を求めて》など、大がかりなインスタレーションが次々と展開していく。半分くらいはどこかで見たことあるが、しかしコンセプトやタイトルは同じでも、素材やサイズや形状は多少なりとも違うわけで、これらを同じ作品と見ていいのだろうかと疑問が湧く。ひと言で言えば「リメイク」ということだろうが、じゃあリメイクばかりで回顧展は可能なのか、ましてや本人がいなくなったらリメイクできるのかと、インスタレーション作家ならではのジレンマに直面する。見る分には別に構わないけどね。

初期の活動も紹介されていた。5歳のときの「ひまわり」の絵はご愛嬌として、学生時代の油絵はド・スタールばりの抽象画で、時代遅れではあるけれどなかなかの力量だ。その隣にパフォーマンスの記録写真があるのだが、これがサイズといい赤い色といい油絵とよく似ている。思いがけないアナロジーにうなってしまった。

2019/06/19(水)(村田真)

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