artscapeレビュー

坂本夏子個展「迷いの尺度─シグナルたちの星屑に輪郭をさがして」

2019年07月15日号

会期:2019/06/08~2019/07/06

ANOMALY[東京都]

坂本夏子といえば、河原温の《浴室》シリーズみたいな(ぜんぜん違うけど)タイル貼りの部屋の中に人物がたたずむ絵しか知らなかったけど、おもしろい視点を持った作家だ。今回は絵画だけでなく、スケッチや立体も展示している。絵画の方は画面の一部または全部が網目やモザイクや格子模様で覆われていて、どこか上空から眺めた地上の姿にも見え、アボリジニの世界観をマッピングしたドリーミング絵画を思わせる。

興味深いのは《ペインティング・ボックス》という立体で、商品の箱の表面を彩色し、蓋を開けて中を見られるようにしたオブジェ。内部には紙細工や粘土細工、プラスチックの小物などが配置され、ジョセフ・コーネルの「箱」を彷彿させるが、鑑賞方法はまったく異なる。《ペインティング・ボックス》の場合、内部を見るには蓋を開けるという行為を伴うこと、そして卓上に置かれた箱の中身を、コーネルのように水平の視線ではなく、上から見下ろすということ。だとすれば、中身も俯瞰されるように配置されているはずで、それは構成というよりマッピングに近い作業ではないかと思うのだ。



Natsuko Sakamoto Signals, mapping 2019
Oil on canvas, H194xW130.3cm
[© Natsuko Sakamoto, ANOMALY, Photo by Ichiro Mishima]

2019/07/05(金)(村田真)

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