2019年11月01日号
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artscapeレビュー

大西みつぐ写真展「NEWCOAST2 なぎさの日々」

2019年11月01日号

会期:2019/10/01~2019/10/19

コミュニケーションギャラリーふげん社[東京都]

大西みつぐは1980年代後半から90年第初頭にかけて、「NEWCOAST」と題するシリーズを撮影していた。「バブルの熱に浮かされた人々が戸惑いながらも居場所を求め、東京湾岸に集うようす」を、カラーフィルムの中判カメラで撮影したシリーズである。それから30年余りが過ぎて、「いったい風景の何が変わったのか? あるいはまた繰り返しの季節を迎えているのか?」と自問自答しながら、以前撮影したのと同じ葛西海浜公園の人工なぎさにカメラを向けたのが、今回の「NEWCOAST2 なぎさの日々」である。

全29点の写真のたたずまいに、それほど変化があるようには見えない。とはいえ、30年余りが過ぎるなかで、かつてはやや違和感があったアメリカ西海岸っぽい雰囲気が、それなりに身の丈に合ったものになっていることに気がつく。海浜公園での人々の振る舞いが、背伸びしなくても、日本人のライフスタイルと溶け合うようになってきているということだろう。大西のカメラワークも自由度が高まり、被写体との距離感を自在に調整することができるようになっている。それでも「なぎさの日々」には、日常からは多少ずれた「ハレ」の気分がまつわりついている。このシリーズには、大西の写真のメインテーマというべき「川」を中心とした東京の下町の情景とは一味違ったテンションの高さがある。大西は展覧会のリーフレットに「川(荒川)と海(東京湾)を行ったり来たりしながら写真家として生きてきた」と書いているが、その往還のプロセスから、今後も魅力的な写真群が生み出されていくのではないだろうか。

2019/10/01(火)(飯沢耕太郎)

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