artscapeレビュー

菅野由美子展

2019年11月01日号

会期:2019/09/24~2019/10/12

ギャルリー東京ユマニテ[東京都]

菅野はここ10年と少し、カップや皿や瓶など器ばかりを描いている。最初はスルバランのように横に並べただけの静謐なものだったが、次第に棚が現れ、それがエッシャー空間のように複雑化し、にぎやかになってきた。今回は棚も床もなく、器が宙に散らばっているような静物画もある。いや、これは果たして静物画と呼ぶのだろうか。いちおう床置きの設定だろう、影はあるのだが、遠近感が無視され、奥の器も手前の器も同じ大きさに描かれている。あるいは、1枚の画面にいろんな器をそれぞれ別個に描き込んだともいえる。初期の頃は器の存在感を表象しようとしていたように見えるが、いまはその存在感を成り立たせる現実感が薄らいできているように感じる。この先どんな静物画が描かれるのか、楽しみのような、不安なような。

2019/10/01(火)(村田真)

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